子供達の水分補給と、お母さんお父さんの水毒(2)

2009年8月16日薬煎院薬局から

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前回は小さなお子さんの水分補給について記事を書かせて頂きましたが、今日のお話はその続編として、子育て世代のお母さん、お父さんの水分の過剰摂取の落とし穴について書かせて頂きます。

小さいお子さんや高齢者の方には、熱中症の予防のため、特に夏場は小まめな水分補給が必須となります(前回のブログ記事を参照されて下さい)が、しかしだからと言って必要以上の水分の摂りすぎは体にとって決してよくありません。
水分の過剰摂取は秋以降にかけて体の変調となって現れてきますが、これらの変調は小さいお子さんより、むしろ子育て世代のお母さん、お父さんで顕著に現れます。
そこで今日は、子育て世代のお母さん、お父さんの水分の過剰摂取に焦点を当てて書かせて頂きます。健康のために意識して1日2?3Lの水を飲まれている方などは、特にお読み頂きたいと思います。

キッズプレイスの薬局では、最近、体がだるい(倦怠感)、気力がでない、汗を多くかく(多汗症)、食欲不振、アトピー性皮膚炎、花粉症、めまい、耳鳴り、冷え性、むくみ、軟便などを訴えてこられるお客さんが多いです。

特に上記のような症状がある方に、「水分を多く取られていますか?」「汗かきですか」などと質問することがあるのですが、そうするとおよそ7?8割の人が「どうしてですか?」「そう言えば水(お茶、ビール)をよく飲みます(飲むのが好きです)」という答えが帰ってきます。中には「友達から1日1.5?3Lの水を飲むようにすすめられて、頑張って飲んでいます」、「最近体が疲れて気力が湧きません」などの答えが返ってきます。
尋ねられたお客さんにしてみれば、症状を聞いただけでどうして分るのだろうと不思議がられますが、上記の症状が2つ以上あてはまる場合、この質問が良く当たります。この問いを投げかけることにより、患者さんが東洋医学(漢方)で言うところの「水毒症状」であるかどうか、およその察しがつきます。

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水毒症状とは、漢方でよく耳にする言葉ですが、簡単に言えば体の中の「水」の要素のバランスや循環が崩れている状態を言います。この状態に陥ると、一見すると互いに関連性のないようないろいろな変調が体に現れて来ます。

漢方で体の状態を診る時の着目点の1つとして「気・血・水」(き・けつ・すい)があります。初めて聞かれる方にはなじみのない言葉ですが、特に難しいことではありません。紙面の関係もあり、ここでは簡単にご紹介します。
「気」というのは、生命を維持していくために体が持つエネルギーのことです。元気の「気」と同じで、これが低下すると病にかかりやすくなります。また体の中で気の分布が偏ると、例えば上半身への偏りであれば「のぼせ」などとして現れます。
「血」とはそのまま体の中を流れる血液のことを指します。むかしから婦人病のことを「血の道症」といいますが、婦人病では子宮を中心とした血液の循環が滞ると(この状態を「お血」と言います。)生理痛や不妊などの症状となって現れます。
「水」とは、リンパ液、消化液、汗、唾液、尿など、体の中の血液以外の体液を言います(水は津液とも言われます)。
これら3つは密接に関連し合っているのですが、中でも「水」の過不足が起きたり循環が滞ったりすることを「水毒」といいます。
水毒がひどくなると、リンパ液、消化液、汗、唾液、尿などの「水」の要素をキーワードとした様々な症状が現れるようになります。

例えば、リンパ液は免疫に深くかかわる「水」の要素ですが、これに変調が及ぶと花粉症、アトピー性皮膚炎、喘息、リウマチなどの免疫系の疾患となって現れてきます。またリンパ液は平衡感覚をつかさどる耳の奥の三半規管の中にもある為、めまいや耳鳴りといった症状に波及します。
同じ「水」でも消化液に変調が及ぶと胃潰瘍、胃下垂、過敏性腸炎などが起こり、食欲が落ちたり軟便が続いたり便秘と下痢を繰り返すなどの症状をともなうことがあります。また汗や尿の変調は多汗、冷え性やむくみとなって現れます。

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最近の水毒症状の方の共通点として「水分摂取量が多い」ことが挙げられます。喉が乾きやすく(これを口渇[こうかつ]と言います)水分を摂ることが「癖」(生活習慣)になっている方や、「水分をたくさん取ると健康になれる」と信じてしまっておられる方が多いようです。
確かに痛風などの病気で尿酸値が高く、体の中の尿酸の排泄を促進するためにお医者さんから水を良く飲むように言われている方もおられると思いますが、そうでなければ注意しないと水毒症状のフルコースを歩む危険性があります(経験的に水毒症状はいま現れていなくても、いずれ順を追って現れることが多いようです)。最も怖いのは、体力と気力が減退して「うつ病」などの精神症状もしくはその一歩手前まで行くことです。

ここで大切なことは、水分を摂取することが悪いと言うことではありません。夏場は特に水分をこまめに取ることが必要ですが、それに乗じて、または間違った情報を信じて水分を「摂り過ぎること」によって思わぬ症状(水毒症状)に陥ることの警鐘を鳴らしたいのです(その理由として、上記のような相談が最近特に多いためです…)。
特に1日に2Lぐらいミネラルウォーターをペットボトル単位で飲まれている方や、喉が渇いて、ジュースやお茶、お酒などを一度に沢山飲まれる傾向のある方などご注意頂きたいと思います。

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水毒については、本当であればもっと丁寧に書かなければならないと思うのですが、歯止めが必要と思っています。つまり、このブログに書くことが場違いという自責の念に加え、量的にとても書ききれません。もし上記のような症状で思い当たる節がある方がおられましたら、お近くの漢方薬局(もしくは漢方外来のある病院)に行ってみてください。精通された先生なら1?2時間ぐらいかけて解説して頂けると思います。そこまでしなくてもさらに詳しい情報を知りたい方は、インターネットを検索するか、本屋さんで漢方についてやさしく書かれた解説書などを読まれることをお勧めします。

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最後に余談ですが、漢方では水毒症状の患者さんに対して「利水剤」「駆水剤」というような生薬(もしくは処方)を用いてこれを治療します。このような知識を持って漢方薬局(もしくは病院)に行かれると、(あくまでも推測ですが)診る方の先生も「この患者さんはただ者ではない…」とより真剣に見てもらえるかもしれません。

夏真っ盛りで水分摂取が多くなりますが、摂り過ぎを注意して頂いて、秋以降の体調維持の参考にして頂ければ幸いです。

2009年8月16日薬煎院薬局から

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