薬煎院薬局の薬剤師より書き込みしています

2020年3月10日薬煎院薬局から

記事に入る前に
以下は科学的根拠が無く飽くまでも仮定を前提とした話であり、私(筆者)の個人的な見解を乗せています。ただし昨今の新型コロナウイルスの流行によるトイレットペーパーの買い占めなどの引き金となったような悪質なデマの誘発を目的として書いたものではありません。家庭の中でできる対応について薬剤師の視点から書いたものです。

インフルエンザに対して、抗インフルエンザ薬のタミフルやリレンザと同等に漢方薬の「麻黄湯」が効くという論文について、2008年にこちらのブログで記事を書かせて頂きました。その後、国内の色々な病院や研究機関で追試や検証実験が行われ、確かに麻黄湯(葛根湯)がインフルエンザに有効であるとのデータが沢山得られるようになりました(実際、日本の厚生省もその効果を認め、ある漢方薬メーカーの医療用の麻黄湯の効能効果に「インフルエンザ」が明記されています)。

これらの知見を基に、こちらのブログでキッズプレイスには、「インフルエンザになったら」という記事をブログに数回にわたって投稿させて頂き、ご家庭で日ごろから麻黄湯(葛根湯)を準備しておき、人混みや体に変調をきたした時点で直ぐに服用することによってインフルエンザの発症を抑えることができることを紹介してきました。

その際の要点として、タミフルやリレンザおよび麻黄湯(葛根湯)など、どのような薬もウイルスが体内で増殖し始めようとしている初期の時点で服薬しなければ効果が得られ難いということです。服薬のタイミングが遅れて体の中でウイルスが増殖しきった状態では十分な効果をもはや期待できません。この点は特に重要なポイントであり、麻黄湯(葛根湯)も含め、感染直後もしくは感染前に服薬しておかなければ意味がないということです。
例として、インフルエンザの場合、病院ではまずウイルスの検査キットを用いてウイルスの存在を確かめたのちに抗インフルエンザ剤が処方されますが、検査キットで陰性の場合は「明日また来てみてください」と言われて様子を見ることになります。次の日に受診して検査キットで陽性が出るということは体内でウイルスがかなり増殖している訳であり、この状態ではもうどの様な薬を飲んでも十分な効果は期待できません。
上の例でもそうですが、新薬(病院で出される薬)はウイルスの存在が特定されなければそれに対応した薬は基本的に処方されません。これに対し漢方薬は「未病」に用いるという考え方があります。未病とは病気になる前の段階(症状が発症する前の段階、ウイルスであればウイルスが増殖して症状が出始める前の段階)であり、ウイルスに罹ったかも知れない思った時点での服薬が可能です。

麻黄湯(葛根湯)は数千年の昔から「風邪」の薬として用いられてきましたが、ここで風邪と一言にいっても、インフルエンザウイルスを含めた「風邪のウイルス」は200?300種類あることを皆さんご存じでしょうか。インフルエンザウイルスや今まさに問題となっている新型コロナウイルスもこのようなウイルスの一種です。

新型コロナウイルス(COVID-19)に対して、中国政府の国家機関(中国国家中医薬管理局の2月19日付け発表)は「清肺排毒湯」という漢方処方が有効であると報告しています。この処方の効果について中国国家中医薬管理局は、
「10省57指定医療機関で701例を投与して観察した結果、130例(19%)が治癒して退院、51例(7%)で症状が消失し、268例(38%)で症状が改善し、212例(30%)は症状が安定し悪化しなかったという。 そのうち351症例が詳しく分析され、うち112人の患者の体温が37.3°Cを超えていたところ、服薬1日後で51.8%、服薬6日後で94.6%の患者が平熱に戻り、また、咳症状214人のうち46.7%が服用して短期に改善した。
また、だるさや吐き気、のどの痛みなどの症状にも顕著な治療効果が見られた。351例の中でひとりも、軽度の患者も普通の患者は重篤にはなっていない。(出典Wikipedia)」とのことです。

清肺排毒湯とは「日本の漢方でも知られる麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)、射干麻黄湯(ヤカンマオウトウ)、小柴胡湯(ショウサイコトウ)五苓散(ゴレイサン)らの漢方薬を混ぜて新しく作った(原文には融合?新(融合創新)とある)ものである。(出典Wikipedia)」となっています。

つまり、清肺排毒湯は麻黄湯と同じく生薬の「麻黄」を主剤としていて、それだけではなく、炎症を抑えることを意図したと思われる生薬の柴胡を取材とした小柴胡湯、体内の水分調整するためと考えられる五苓散を組み合わせられています。その効果は、解熱作用に優れ、服薬直後から新型コロナウイルスによる発症に対して効果が認められています。中国国家衛生健康委員会と国家中医薬管理局は、清肺排毒湯の使用を推奨するむね中国全土に通達(出典Wikipedia)しています。

Wikipediaには、「中国政府当局は中医薬と漢方薬は別の物だとの認識に立っている。」と記載されているが、日本で用いられている漢方薬は中国の漢方薬である中医薬と用いる処方や生薬は基本的に同じものです。

新型コロナウイルスは未知であるが故に恐れられていますが、ワクチンや特効薬が開発されるまでまだまだ時間が必要です。
清肺排毒湯については、厚生省が認めない限り薬局などでは漢方薬として処方できず購入することもできません。それ故、これは飽くまでも個人的な提案となりますが、未知のウイルスに対処するためにも、万が一に備えてすぐに服薬できるように、少なくとも麻黄湯などの漢方薬をご家庭で常備しておいた方が良いのでないかと思われます。大切な家族を守りたいという一心から、少なくとも私の家ではそのように対処しています。

また新しい知見などが得られましたらブログで紹介させて頂きます。皆様もくれぐれもお気をつけてお過ごしください。

 

追記 ***2020年4月29日***
金沢大学附属病院漢方医学科の小川 恵子先生が新型コロナウイルスに対する清肺排毒湯について日本の承認済み漢方薬による代用方法を報告されています(日本感染症学会)。

2020.4.21 日本感染症学会 <(特別寄稿)COVID-19感染症に対する漢方治療の考え方(改訂第2版)および(寄稿)中国におけるCOVID-19に対する清肺排毒湯の報告>より

小川先生によれば、麻杏甘石湯+胃苓湯+小柴胡湯加桔梗石膏を併せることにより清肺排毒湯の代用が可能であると述べられています。これであれば日本の漢方薬局でも作ることが出来ます(この記事を書いている私の薬局でも作ることができます)。

また、小川先生の改定第2版の5ページには「さらに、中華人民共和国国家衛生健康委員会の2月の発表13)では、清肺排毒湯での治療を確認済みの701症例のうち、130症例が治癒および退院し、51症例の臨床症状が消失し、268症例の症状が改善し、212症例が悪化せず安定した症状改善を示したと報告されています。COVID-19に対する清肺排毒湯の効果的な治癒率は90%以上です。」と記載されています。

私の家族は早速、麻杏甘石湯+胃苓湯+小柴胡湯加桔梗石膏による煎じ薬の清肺排毒湯を準備して新型コロナウイルスに備えています(煎じ薬であれば無添加なので子供にも安心だからです)。

このブログをご覧の皆様も是非、このような薬(清肺排毒湯)があることを知ってコロナウイルス対策に役立てて頂きたいと思います。

2016年5月23日薬煎院薬局から

以下の記事は2013年に書いて、下書きとして保存していたものですが、今年も私の住む街(福岡市内)の小学校の運動会シーズンが近づくにつれてふと思い出してリリースすることにしました。3年前の記事ですので、現状と少しズレているかも知れませんが、お読みいただければ幸いです。なお、小学校によっては5月でなく10月に行っているところもあるため、福岡市の全ての小学校について言えることではありませんので、予めご承知おきください。

 

キッズプレイスのある福岡市で、今年(2013年)は5月26日の日曜日に小学校での運動会が集中していました。

たまたまその日、スーパーで買い物を済ませて帰る途中、唐突にテレビ局の方が近づいて来て「取材に協力してもらえませんか?」とお願いされました。取材の内容は5月に行われる運動会について意見を聞かせてほしいというものでした。

私自身、5月に福岡市で運動会が多いことはも好ましくないと思っていたのでその理由を話せばよかったのですが、その時はタイミングが悪く急いでいたので取材を断りました。
その後、私の職場で「5月の運動会」について話題となり、備忘録としてブログに書こうと思いました。
以下は私が福岡市で5月に運動会を開くことを好ましくないと考える理由です。

1.PM2.5の影響
2.黄砂の影響
3.光化学スモッグの影響
4.福岡市特有の問題
5.子供たちの成長および体力負荷への影響
6.天候への配慮

ストレートに国名を書くことは控えますが(汗)、1?3は隣国の●国の影響で、福岡はこの季節が一番大気の汚染状態が悪くなっています。
これは偏西風の流れの影響で●国から大気汚染物質が日本、特に九州を中心とした西日本に流れてくることによる公害です。私が勤める薬局でも、花粉症のシーズンを終わっても、黄砂の影響が少なくなる季節まで、アレルギー性鼻炎や喘息の方の相談が多くあります。
黄砂やPM2.5に加えて、紫外線の強い日は光化学スモッグが発生します。私の家族は今年のゴールデンウィークも相変わらずキャンプ三昧で過ごしましたが、私自身、車で高速道路を移動中、街中でなくても目や鼻が痛くなりました。

●国から大気汚染物質を運んで来る偏西風の流れはおよそ6月下旬まで続くので、7月以降であれば影響がなくなります。つまり、九州に住む人にとっては4?6月は試練の季節となります。

従って5月に運動会を開けば、子供の呼吸器に悪影響が大きいことが当然予見されます。

さらに、福岡市に特有のプチ公害問題が、大気の汚れに拍車をかけています。それはディーゼルエンジンで動くバスやトラックの「排気ガス」の影響です。
福岡には日本で一番バスの保有台数が多い「バス会社」があります。
福岡市を訪れたことがある方なら誰もが驚くことだと思いますが、福岡市の中心街(天神など)の大通りでは、福岡名物の「バスによる渋滞」が見られるます。十台前後のバスが連なって、どのバスも黒煙を上げて走っています。特に整備不良のバスはさらにもうもうと黒煙を上げて走るのでバスの後ろを走る車は車間距離を開けて走っています。

ディーゼル車の排気ガスに含まれる黒煙、いわゆる「ディーゼル・カーボン」は、それ自体には抗原性がなくても、他のアレルゲン物質の抗原性を相乗的に高めることが医学的に知られています。
例えば、周りが杉林の山の中に住んでいてもそれだけでは花粉症や喘息になりにくいのですが、近くに国道などがあり、バスやトラックの往来が激しいと、その交通量に比例して道路の周辺に沿って花粉症や喘息患者が多いことが疫学調査より分かっています。

つまり、福岡市では●国からの黄砂や大気汚染物質の来襲に加えて、日本一バスが多い街であるため、余計に空気が悪くなり易いのです。
バスについては東京都のように行政指導でカーボン・トラップ・フィルター(排ガスフィルター)を取り付けるように指導してほしいものですが、バス会社が支払う税金が大きな税収となっている以上、行政指導による排ガスフィルターの装着指導は夢の夢かも知れません。

このように空気環境が悪い中に加え、夏前である5月に運動会を開くということは、子供たちの成長および体力負荷への影響も考える必要があります。
運動会と言えば10月が当たり前と思うのは私だけではないと思いますが、10月に運動会を行うことは子供の成長の上からも理にかなっています。
子供たちは夏の間に太陽光線にあたることにより、大なり小なり日焼けすると思いますが(中には塾通いで日焼けしない子も多いかもしれませんが)、日焼けすることにより皮膚表面でビタミンDが作られ、その結果、骨が強くなります。つまり夏を過ぎることによって子供たちの骨や体は強くなるという訳です。ところが5月では紫外線こそ強いものの、春が終わって十分な日光を浴びることなく、体の成長がを待たずに運動化会を迎えることになります。その結果、怪我が増えてしまうので、どうしても動きの小さな運動会となりがちです。
従って子供たちの成長を考えると5月より10月の運動会の方が、子供たちの体力面からも適しているのではないかと思われます。

一方、10月には体育の日という祝日がありますが、これは東京オリンピックの開会日に合わせて制定されたと記憶しています。それと同時に10月10日は晴れの特異日であり、統計的にこの日は晴れる確率が高いことが分かっています。5月も五月晴れで空気が乾燥してカラッと晴れた日が多いですが、統計的に晴れる日が分かっているなら、「体育の日」と言う名前がついた日に運動会を行う方が子供たちにも説明しやすいのではないかと思います。

5月に運動会をする理由の一つに、4月に入学した1年生や、進学した子供たちが新しい友達と慣れるためがあるそうです。新しい友達と運動会を通じてより親しくなることが狙いとのことですが、これにつても少し首をかしげたくなります。
10月になり十分に親しくなった友達と一緒に迎える運動会の方が、より楽しいのではないか?とも思えます。要は、ものは言いようかも知れませんね。

少し愚痴っぽい記事となりましたが、運動会をするなら「スポーツの秋」、そう考えるのは私だけでしょうか…。

2016年2月28日薬煎院薬局から

久しぶりにブログを更新します。実は、以前にもインフルエンザについてのブログ記事を書いていますので、ブログ(インフルエンザ予防法)を更新すべきかどうか、3日間ほど迷っていました。しかし、次のような悲劇を繰り返さない為にも、少しでも多くの方に身近に出来るインフルエンザの予防法を知ってほしいと思いました。

私は次の記事を見て、同じ子(娘)を持つ親として涙が止まりませんでした。ご両親の悲痛な思いが綴られています。

 

「笑顔、増やしてくれるよね」臓器提供女児の両親が手紙

出典:朝日新聞デジタル 2月25日(木)16時47分配信

東海地方の病院で脳死と判定され、臓器提供をした6歳未満の女児の家族が25日、日本臓器移植ネットワークを通じて、思いをつづった手紙を公表した。女児はインフルエンザ脳症で入院し、提供は家族や親族13人の総意で決めたという。全文は以下のとおり。

 

Aちゃんが体調を崩してからお父さんとお母さん辛(つら)くてね。

毎日毎日神様にお願いしました。目に見える物全てに、お山に行ってお願いして、川が見えればお願いして、海に向かっても……いろいろ神社なんかも夜中に行ってお願いしました。最後には落ちている石ころさんたちにもお願いしたんだよ。

でもね、どうしてもAちゃんとお父さんを入れ替えることはできないんだって。もう目を覚ますことはできないんだって。もう長くは一緒にいられないんだって。

お父さんとお母さんは辛くて辛くて、寂しくて寂しくて泣いてばかりいたけれど、そんな時に先生からの説明でAちゃんが今のお父さんやお母さんみたいに涙にくれて生きる希望を失っている人の、臓器提供を受けなければ生きていけない人の希望になれることを知りました。

どうだろう?Aちゃんはどう思う?いやかな?

お父さんやお母さんは悩んだ末、Aちゃんの臓器を困っている人に提供することを決めました。もしいやだったらゴメンね。

お父さんもお母さんも臓器を必要としている人がたくさんいて、その人を見守る人たちがどんなにか辛く苦しい思いをしているか知っています。もしその人たちにAちゃんが役に立てるなら、それは素晴らしいことだと思ったんだよ。

一人でも人の命を救う。心を救う。ってすごく難しいことでお父さんもできるかわからない。だけど、とても素晴らしく、尊いことなんだよ。

もしAちゃんが人を救うことができたり、その周りの皆さんの希望になれるとしたら、そんなにも素晴らしいことはないと思ったの。こんなにも誇らしいことはないと思ったの。Aちゃんが生きた証(あかし)じゃないかって思ったの。今のお父さん、お母さんみたいに苦しんでいる人が一人でも笑顔になってくれればどんなに素晴らしいだろうと思ったの。

そして、その笑顔はお父さんやお母さんの生きる勇気にもなるんだよ。

いつも周りのみんなを笑顔にしてくれたAちゃんだから、きっとまた世界の笑顔を増やしてくれるよね?

命は繫(つな)ぐもの。お父さんとお母さんがAちゃんに繫いだようにAちゃんも困っている人に命をつないでくれるかな?

願わくば、お父さんとお母さんがAちゃんにそうしたように、AちゃんもAちゃんが繫いだその命にありったけの愛を天国から注いでくれると嬉(うれ)しいな。

お父さんより

お母さんを

もう一度

抱きしめて

そして

笑顔を見せて

お母さんより

 

朝日新聞社

 

元気だった我が子を失ったご両親の喪失感は、とても筆舌に尽くしがたいと思います。

このような悲劇を繰り返さない為にも、ちょっとした工夫でインフルエンザ感染やそれに伴うインフルエンザ脳症を未然に防ぐことができることを、全国の子を持つ親御さんに知ってほしいと思い、ブログを更新しました。

 

唐突で申し訳ありませんが、読者のみなさん伝えたいことは、インフルエンザを予防するためには、葛根湯などを、少なくとも冬の間だけでも「自宅に常備して活用して欲しい」と言うことです。

以下、その理由の説明です。

葛根湯はタミフルやリレンザと言った抗インフルエンザ薬と同じくらいインフルエンザに効くことが知られています(臨床研究で明らかにされており、論文発表や多くの学会で報告されています)。これらの薬(葛根湯、タミフル、リレンザ等)は、何れもインフルエンザウイルスの増殖を抑えることを以前キッズプレイスのブログでも何度か紹介しています。

しかし、これらの薬が効くのは、インフルエンザウイルスが体内で増殖を始める初期段階だけであり、ウイルスが増えてしまった後では、もうどの薬(葛根湯、タミフル、リレンザ等)も効きません

 

タミフルやリレンザと言った抗インフルエンザ薬は医師の処方箋が必要であり、病院ではまずインフルエンザ測定キットを用いて患者さんがインフルエンザウイルスに陽性であること、つまりインフルエンザウイルスの存在を確認してからでなければ、タミフルやリレンザなどを処方しません(一般的に、西洋医学では原因があって初めてそれに対する薬を処方するためです)。

ここで問題なのは、インフルエンザ測定キットで陽性反応が出るということは、既に体内でインフルエンザウイルスが一定量以上増殖していることを意味し、この段階で薬を服用しても、あまり効果は期待できません。つまり、効くはずの薬も投与時期が遅れれば意味を成しません。

最も留意すべきことは、インフルエンザに感染した場合、親が子供の発熱(微熱の段階では子供は元気なので、ぐったりして様子がおかしいと思った時にはかなりの発熱のことが多い)に気づいて病院に連れて行く時点では、既にインフルエンザウイルスが体内でかなり増殖しており、手遅れになる確率が高いと言うことです。なぜなら、ウイルス増殖が起きたからこそ、子供の体がウイルスを排除しようとして、生体防御反応の一環として体温を上げている(発熱している)からです。
つまり、インフルエンザについては、病院に連れて行く以前に、何らかの打てる手があるのなら、試みる価値があると言うことです。

 

では、親としてはどうするか。

私は次のことを強くお勧めいたします。

  1. 自宅に葛根湯などを常備しておいてください。葛根湯はドラックストアや漢方薬局で誰でも購入できる、安全性の高い風邪薬(後述)です。錠剤タイプの葛根湯は錠剤が喉に引っかかりやすいため、5才以上でないと飲めませんから、できればエキス顆粒剤、もしくは液体タイプの葛根湯がお勧めです。これらは長いものでは5年間保存でき、お子さんだけでなく大人のインフルエンザの予防法にも有効です。
  2. そして、冬場にお子さんが鼻水を出していたり、食欲が少し落ちていたり、微熱があったり、少しきつそうにしていたら、インフルエンザであってもなくてもすぐに葛根湯を飲ませてあげて下さい。

 

もしお子さんがインフルエンザに感染していたら、葛根湯の服用が早ければ早い程、その後、大きな効果をもたらします。ポイントは以下にお子さんの変化を見抜いて早く投与できるかどうかにかかっています。小さいお子さんほど、微熱でも見かけ上、全く元気に見えるため変化を見逃しやすいからです。インフルエンザの時期だけでも、定期的に体温測定を行うか、小まめにお子さんの額に手を当てて体温の変化を察知するなどの工夫が望まれます。

インフルエンザに罹った場合ですが、私の経験では、5才未満のお子さん場合、40℃近い熱が3?7日間も続くことは無くなります。発熱期間はどれだけ早く服用できたかにより大きく変わり、服薬が早ければ発熱がみられない場合もあります。また、例え1日目?2日目にかけて40℃近く発熱しても、早めに服用できていれば、それ以降は下がり始めます。

同様に10才以下のお子さんの場合、発熱しても5才未満のお子さんに比べればより早い回復が期待できます。

ちなみに大人(18才以上くらい)の場合は、葛根湯(大人の場合は麻黄湯がお勧めの場合もあります)の服用が早ければ、たとえインフルエンザウイルスに感染しても一晩寝れば翌日は普通に会社や学校に行けるはずです。

以上のように、葛根湯を服用すると年齢が高い程(ご年配の方は除く)回復が早い傾向があるようです。

 

 

そもそも、通常のインフルエンザは風邪の一種ですから、本来は、数日寝ていれば治る病気です。

しかしインフルエンザが恐ろしいのは、何もしなければ40℃近い熱が3?7日間ほど続き、その間に脳神経細胞が破壊されることです。これをインフルエンザ脳症と言います(5才くらいまでのお子さんの場合、A型インフルエンザで起きる急性壊死性脳症などがあります)。小さいお子さんの場合、40℃近い発熱を起こすと熱痙攣が起きることがありますが、さらに熱性譫妄(ねっせいせんもう)と言って幻視、幻覚、異常行動を伴うようになると大変危険です。

私の場合、娘が1才後半くらいの頃から少しでも様子がおかしいと思われた時に、間髪入れず葛根湯を飲ませていました。そのお蔭で娘は幼稚園や小学校を病欠したことがありません(幼稚園も小学校もほぼ皆勤で、一日だけキャンプでずる休みしたくらいです)。

 

 

葛根湯は漢方ですが、漢方には「未病」と言う考え方があります。未病とは病気になる前段階の体の微妙な変化の段階を言いますが、漢方薬は未病にも使います

つまり、お子さんであっても大人であっても、インフルエンザであるかどうかわからない体の微妙な変化が見られた段階で葛根湯を予防的に服用することは、東洋医学的には正しい用法ではないかと私は考えております。

実際、インフルエンザウイルスは潜伏期が短く、ウイルス増殖が盛んになる前に出来るだけ早く服用することが、重症化を避けるカギとなります。少し大げさかも知れませんが、一刻を争うと言っても言い過ぎではないかも知れません*。病院はその後で大丈夫です(病院で診察待ちしている時間ももったいないからです)。

*インフルエンザウイルスの場合、のどや鼻の粘膜に付着後、約20分くらいで細胞内に入り込みます。また、感染成立後の増殖速度も速く、潜伏期間が短いため大流行しやすいと言われています。

 

余談となりますが、私は、この漢方の「未病」の考え方を生かして、小さなお子さんのインフルエンザで予防に葛根湯の利用をキッズプレイスの保育園の園児さんの親御さんに推奨してきました。それだけでなく、薬局では受験生に葛根湯の服用を勧めています。受験生は冬の寒い時期に勉強をしなければなりませんが、体が冷えたりインフルエンザに罹りやすく、受験日直前に風邪をひくなどの失敗につながりかねません。
葛根湯には「しょうが湯」の成分(生姜、葛、大棗)が全て含まれているため、服用すると体が温まります。ちなみに、葛根湯は「肩こり」にも適用があるため、受験勉強で体が冷えて肩こりするような場合でも応用できます。さらに葛根湯に含まれる麻黄(まおう)と言う生薬(字が似ているため、大麻や麻薬と勘違いする人が多いのですが、全く似て非なるものです)は、少しだけ頭をスッキリさせてくれると共にリビドー(性衝動)を抑えてくれます。このため受験に専念すべき受験生には、胃を荒らすことなくインフルエンザを予防すると共に、肩こり防止、体を温めること、頭をスッキリさせること、リビドー抑制、と一石五鳥かも知れません。

 

読者の皆さんにお知らせしたいことが尽きないのですが、分からないことがあれば、この記事にコメントを頂くか、直接ご連絡頂ければお答えいたします。以下にはその他の要点をまとめておきます。

  • タミフルやリレンザなどの抗インフルエンザ薬には解熱作用が無いものがあります。このため病院では抗インフルエンザ薬に解熱鎮痛剤が同時に処方されることがあります。また解熱鎮痛剤は副作用で胃腸が荒れることから、予防薬として胃薬が同時に処方されることが多いです。つまり抗インフルエンザ薬は3点セットで処方されることが多いと言えます。
  • 一方、葛根湯は抗インフルエンザ薬同様、インフルエンザの増殖を抑えますが、それ自体に解熱鎮痛作用があります。また胃腸を荒らすことはありません。このため葛根湯の場合は1剤で済みます。
  • さらに、葛根湯は安全域が広いお薬です。葛根湯の「煎じ薬」の場合、1才未満の乳児には、やむを得ない場合のほかは服用させないことになっていますが、3か月以上であれば服用可能となっています(薬局製剤業務指針、添付文書例)。なお、錠剤およびエキス顆粒剤の場合は、メーカーにより微妙に適応可能年齢が異なります(上記は煎じ薬の例です)。
  • 風邪のウイルスは200?300種類あると言われており、インフルエンザウイルスはその1つです。葛根湯はインフルエンザだけでなく風邪症状全般に適用がありますから、インフルエンザ以外の風邪、例えば夏風邪などにも有効です。ちなみに私の経験では、服用のタイミングが早ければ、ノロウイルスなどによる嘔吐下痢症状もある程度緩和してくれるようです。
  • 他方、葛根湯にも欠点があります。お子さんにとっては味が不味い点です。この点は大人も同様かも知れません。そうであるからこそ、小さいころから飲む癖をつけておくと、後々、漢方薬という選択肢も選べる事になり、西洋薬に加えて薬の選択肢が増え、将来、病気の時に得することになります。私の娘の場合は、インフルエンザ予防に(1才後半頃から)葛根湯を与えていましたが、無理に飲ませることはせず、後でご褒美(娘の好物のアイスやイチゴ)を与えるようにしていました。
  • また繰り返しとなりますが、葛根湯は万能薬ではありません。服用のタイミングが遅れればインフルエンザに対して効果を発揮することはありません。
  • 葛根湯を服用しても病院に行かなくて大丈夫な訳ではありません。インフルエンザは脳炎だけでなく肺炎も併発しやすいので、特にお子さんが小さい場合は小児科受診を心掛けられてください。病院ではお医者さんに葛根湯を服用したことを伝えてください。
  • インフルエンザに有効な漢方薬としては、麻黄湯が有名であり、インフルエンザに対しては葛根湯より効果的と考えられます。しかし、麻黄湯は葛根湯より体力がある方に適しており、葛根湯に比べて麻黄湯は甘味が少なく味が苦いため、このブログ記事ではお子さんが飲みやすいと言う観点から葛根湯を取り上げました。同様に、お子さん(およびご年配者)の場合、麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)などの処方もインフルエンザに有効ですが、こちらはさらに味が苦くなります。処方の違いについて気になる方は、漢方に詳しい医師や薬剤師にご相談されてください。

 

何度も繰り返しとなりますが、小さいお子さんがいる家族では、インフルエンザを予防するためにも、葛根湯などを常備されてることをお勧めいたします。そしてインフルエンザの季節になり、悪寒、体のだるさ、節々の痛み、咳、鼻水、微熱、お子さんであれば少し元気がなさそうな様子を感じたら、間髪入れずに服用されることをお勧します。

また、不幸にもお子さんがインフルエンザに罹って発熱した場合、手短にある大人用の解熱鎮痛剤を飲ませてはいけません(以前の記事を参照ください)。ライ症候群のような重篤な副作用が起きる危険性があります。子供用の解熱鎮痛剤をご用意ください。

 

冒頭のご両親に深く同情致しますと共に、亡くなられたお子さんのご冥福をお祈りさせて頂きます。この記事が小さなお子さんのインフルエンザ脳症の予防に少しでも役立つことができれば幸いです。

 

文責:薬煎院薬局 薬剤師 井手

 

補足:この記事をお読みいただきましてありがとうございます。時折ご質問を頂くため、市販で買える葛根湯や麻黄湯をご紹介させていただきます。

葛根湯30包入り

麻黄湯30包入り

2013年6月14日薬煎院薬局から

こんにちは、 今日は久しぶりにキッズプレイスのブログに書き込みをさせて頂きます。お題はPM2.5の思わぬ副作用についてです。

PM2.5の思わぬ副作用について
福岡市では隣国からPM2.5が飛来するため、福岡市が市民に警戒を呼びかけています。しかし、この警戒により思わぬ副作用が現れています。私の薬局でも今年は3月以降、アレルギー性鼻炎、アレルギー性慢性気管支(喘息)など患者さんが増えています。

ダニ・アレルギーが増えている
私は敢えてアトピーの患者さんに「できるだけ晴れた日は布団や枕を干して下さい」と指導しているのですが、それでもみなさん異口同音に「PM2.5が飛来しているから窓を開けたり、布団や枕、敷パッドなどは外に干さない」という方がほとんどです。特に福岡市ではPM2.5の数値が高い場合、外出を控えるように促していますので、PM2.5による汚染を恐れるお母さん方の気持ちはとても良く分かります。
でも、布団を干したり換気をしないと家の中でダニが爆発的に増え、今まで気にするほどではなかった方がアレルギー性鼻炎、アレルギー性慢性気管支(喘息)、アトピーなどのアレルギー疾患を発症されています。そうして相談に来られる患者さんが増えています。

特に今年にこの傾向が強い
そしてこの傾向は今年になり特にPM2.5の影響がマスコミで取りざたされるようになってから顕著です。いつもなら3月の花粉症シーズンを終えると、鼻炎などで来店される患者さんが減るはずなのですが、今年は4月以降増える傾向にあり、例年にない事態(異常事態)が続いています。

PM2.5を気にしすぎない
PM2.5が日本に飛来してくることは残念であり、PM2.5の発生そのものを止める必要がありますが、まだ当分このような状態が続くと思われます。それと同時にPM2.5を受け止める側も過敏に反応し過ぎてはいけないと思います。
PM2.5については研究結果を待たないといけないのですが、2?3か月程度の期間で日本に飛来するレベルのPM2.5を吸っても体に直ちに影響はないはずなのですが、PM2.5を気にして家を閉め切ったり布団を干さないと、室内でダニが増えてアレルギーを助長する結果となります。
ダニが増える理由は、室内での湿度が上がるためです。ダニは50%を切ると乾燥して死にますが、寝汗で湿った布団や枕、また閉め切った室内では湿度上昇と共に爆発的に増えてしまいます。
ダニが増えると体はそれを異物と認識して抗体(IgE抗体)を作り、限界点を超えるとアレルギーが引き起こされます。
そして最悪なことに、今の住環境ではダニが1年じゅう繁殖しやすいため、一旦、ダニ・アレルギーを発症すると、一年を通して症状が出ることになります。このことは、一度発症するとずっとアレルギー性鼻炎、アレルギー性慢性気管支(喘息)、アトピーなどの症状で苦しむ結果となります。
またこれらの症状はメカニズムが同じであるが故に(主にI型アレルギー反応、即時型アレルギー反応とも言います)、交互に症状が入れ替わったり、同時に3つ発症することもあります。

かつての日本も大気汚染がひどかった
かつて昭和40年代ごろ、高度経済成長期の日本も公害で苦しみました。私の薬局には福岡市にありますが、福岡市に隣接する北九州市では、洞海湾の汚染や光化学スモッグや煤煙による公害が問題となりました。当時の北九州市も今の●国の首都と同等以上の汚染があり、気管支喘息の患者さんが増えたことは事実ですが、現在、日本に飛来するPM2.5のレベル程度で直ぐに喘息を発症することは考えられません。
むしろ危ないのは、PM2.5を気にして部屋の中のダニの量を知らず知らずにうちに増やしてしまい、ダニ・アレルギーを原因としてアレルギー性鼻炎、アレルギー性慢性気管支(喘息)、アトピーなどの症状を発症することです

技術の進歩によりPM2.5のような微細粒子の正確な係数が可能となり、数年前よりデータがとられるようになりましたが、PM2.5そのものよりPM2.5を気にしすぎてダニ・アレルギーになる方が厄介であることを忘れないでほしいと思います。

もしアレルギーになったら
アレルギー(ここではI型アレルギー反応に焦点をあてます)は体の防衛本能として起こるため、誰でもアレルギーは起こり得ます。つまり、アレルギー性鼻炎、アレルギー性慢性気管支(喘息)、アトピーなどのアレルギー症状は、体が自分自身を守ろうとして免疫が暴走している状態と言えます。
この暴走を根本的に元に戻す方法は私の知る限り3つありますが、その中の1つが漢方薬を用いる方法です(漢方薬ではよく「体質改善」と言いますが、漢方薬には体の免疫機能を液性免疫(ヘルパーT2優位)から細胞性免疫(ヘルパーT1優位)へ変える力があるようです)。漢方薬による治療はおよそ1年?1年半かかりますが、一旦治ってしまうと、再発が起こりにくい(ほぼ一生再発しない)という特徴があります。また漢方薬による治療は根本治療であり、体の免疫機能の暴走により大量に作られていたIgE抗体が検出限界もしくは正常レベルまで戻ります
難しい話はともかく、漢方薬でアレルギーを治す場合は、アレルギーに対する知識、使う処方および剤形が非常に重要なポイントになります。つまり処方を行う医師や薬剤師のテクニックが大いにものを言う事になるのですが、残念なことに、その先生の腕が確かかどうかについては1年程度経たないと分かりません。ですので最初に十分に話をされることをお勧めいたします。

 

薬煎院薬局から

キッズプレイスには小笹長丘保育園と平尾大楠保育園の2つの保育園がありますが、その他に薬局があるのをご存知でしょうか(汗)。この記事を書いている私は、その薬局に勤める薬剤師です。以前は“かんぽう先生”としてキッズプレイスの保育園で保育士の先生方のお手伝いをしながら園児さん達の相手をしていたこともあります(園児さんに相手にしてもらっていた?)。

そのような経験もあり、不定期ですがこの「ブログでキッズプレイス」で若いお母さんやお父さん方が子育てで役立つ情報を探して記事を書かせて頂いています(園児さんの日々の様子の他に、時折おかしなブログ記事が載っているのは私のせいです、お許し下さい)。

古い話ですが、いまから5年ほど前、自分の仕事にかかわる内容としてインフルエンザに麻黄湯が効くことを記事にしたことがあります。それがどういう訳か、今回、廻り廻って今回NHK福岡放送局からインフルエンザと麻黄湯についてテレビの取材を受けることになりました…。
そう言えば、キッズプレイスでは以前に平尾大楠保育園がテレビドラマ(民放)のロケ現場に使われたり、私の薬局も民放ラジオ局の取材を受けたことがありますが、天下のNHKさんからの取材は初めてです。

取材の内容は、昨今いろいろな情報番組などで取上げられているインフルエンザに麻黄湯が効くということについての取材です。

週刊誌やいろいろなメディアで取上げられ、今では麻黄湯という言葉が良く聞かれるまでになりましたが、私が前に「ブログでキッズプレイス」に麻黄湯についての最初の記事を書いた2007年当時は、インフルエンザと言えばタミフルかリレンザが主流で、自らの経験以外に参考になる麻黄湯についての論文等が僅かに2つほどしかなく、記事を書くのに苦労したことを覚えています。
余談ですが2007年?2008年当時、小学館や集英社などの雑誌社から「ブログでキッズプレイス」に頻繁にアクセスが来ていました(誰が見に来ていたかについてはブログのアクセスログを見ると分かります)。当時はその理由が分かりませんでしたが、後になって、週刊誌に「インフルエンザに漢方2000年の知恵」などと麻黄湯の記事が踊るようになって、自分の書いたブログが週刊誌のネタになっていることがかった次第です。

当時、インフルエンザと麻黄湯の記事を書こうと思った一番の理由は、キッズプレイスの保育園でインフルエンザが流行ると園児さんも保育士の先生方も非常に困るからです。特に先生方が倒れると他の先生に負担が掛かって困るので当時は万が一に備えて保育園に麻黄湯を常備薬として置いていました。そのせいもあって、当時キッズプレイスではインフルエンザに罹る先生がいませんでした(園児さんもほとんどいませんでした)。

前置きが長くなりましたが、服用するタイミング(ひき始め)が適切であればインフルエンザには麻黄湯や葛根湯また麻黄附子細辛湯など、麻黄という生薬を含んだ処方が良く効きます。
小さいお子さんは大人のように「どうも調子がおかしい」であるとか「悪寒がする」などの体の変調が分かりにくいために、タイミングが上手くつかめず、少し熱が出てきてから漢方薬を飲むことが多くなります。それゆえこれらの処方は万能ではありません。しかし、少しでも早く服用することができれば、一過性に高熱が出てもその後は37度から38度程度に下がり2?3日程でよくなります。少なくとも私が見てきた限りでは39度から40度近い高熱が数日続いたり、重症化する例はありませんでした。一方、大人であれば、「どうも調子がおかしい」、「悪寒がする」と言った場合に直ぐに漢方薬を服用すれば寝込むことはないようです。それだけ大人の方が風の初期変化を捉えやすいためだと思われます。

?漢方薬ですが、例えば同じメーカーの同じ同じ処方(麻黄湯)でも錠剤と粉末では飲ませることができる最低年齢が異なります。小さいお子さんに錠剤を飲ませると誤嚥(間違って薬が気管支に入ること)する危険性があるため、錠剤の方が年齢が高くなっていることが多いようです(3?4歳ぐらいまでのお子さんであれば粉末の方が適しています)。でも5歳くらいに大きくなると錠剤でも飲めるようになります。
一方、煎じ薬(液体)であれば、用法上3ヶ月以上の乳児から飲ませることができます(但し、味が苦いので小さいお子さんが問題なく飲めるかどうかは別問題です。ちなみに私の娘は2歳の頃から煎じ薬を飲んでいます…)。

NHKさんの取材では製薬メーカーの製品を撮ることができないため、煎じ薬を中心とした取材になりました。取材時間は3時間でしたが、オンエアは1分もないと思います(涙)。撮影ではインタビューの他にカメラ担当の方が麻黄湯に使う生薬を繰り返し撮影されておられました。撮影スタッフの方は皆さん言い方ばかりで、撮影後の雑談の方が熱が入りました(笑)。

?放送される番組ですが、NHK福岡放送局の午後6時10分から7時まで放送されている「熱烈発信!福岡NOW」と言う番組で、放送日時は本日(2月13日)です。この記事をもう少し早く書けばよかったのですが、いろいろと忙しく遅くなってしまいました。
私の顔が放送倫理に引っかからなければカットされずに放送してもらえると思います。次回は「お母さんといっしょ」の取材でキッズプレイスの保育園に来て頂けるといいなぁ、と思いました(笑)。

 

2012年1月19日薬煎院薬局から

こんにちは。

ブログでキッズプレイスではおもに園児さんたちの日々の様子をお伝えしていますが、それ以外にも子育てに役立ちそうな情報を記事にしております。
今日は生後1歳頃までの赤ちゃんについて注意すべき「乳児揺さぶり症候群」についての記事になります。

読者の皆さんは「乳児揺さぶり症候群」(SBS:Shaken Baby Syndrome)をご存知でしょうか。赤ちゃんを揺さぶると脳血管が切れて硬膜下出血などを起こして重篤な症状や後遺症が残ることがあります。そしてそれは思いもよらぬことから起きる場合があり、1歳未満の赤ちゃんを持つご両親は特に注意する必要があります。

ちなみにこの乳児揺さぶり症候群は保育士の試験に必ずと言ってもよいほど出題されるポイントで、保育士資格を持つ先生方は必ず知っています。だから保育士は赤ちゃんをあやす時もプロとして決して強く揺さぶったりはしません。

ヒトの脳は頭の中(頭蓋骨の中)に納まっていますが、頭蓋骨にしっかりと固定されているのではなく脳と頭蓋骨の間には隙間があり、赤ちゃんの場合はこの隙間が比較的広くあいています。少々乱暴な言い方かもしれませんが、赤ちゃんの脳は頭蓋骨の中に多少プカプカしながら浮いているようなイメージです。
なぜそうなっているかと言うと、出産時、赤ちゃんの頭蓋骨は産道を通過する時に柔軟に変形します(潰れます)。その際、脳まで潰れてしまわないようにするため広めの隙間が作られています。また産後から1歳ごろまでの急速な脳の成長にあわせて予め隙間があいている訳です。隙間といっても空気が入っている訳ではなく髄液などの液体で満たされています。

一方、脳と頭蓋骨の間の隙間には大小の血管があり、橋渡しされています(図をご覧ください)。専門的にはこの血管のことをMittenzweig静脈(大人の場合は架橋静脈)と言います。赤ちゃんの場合は脳と頭蓋骨の間の隙間が大きく開いているうえに、血管そのものが脆いため切れやすくなっています。
このような状態で赤ちゃんの体を揺さぶると、頭の中でプカプカしながら浮いている脳が揺さぶられ、橋渡しをしていた血管が切れて出血を起こします。ほとんどの場合、出血した血液は硬膜と言われる膜の直下に溜まって血の塊(これを血腫といいます)となります。このような状態を「硬膜下血腫」といいます。

硬膜下出血に陥った直後であれば、それまで大泣きしていた赤ちゃんが急に嘘のように泣き止んだり、視点が定まらなかったり、ミルクを戻したり、ゆざぶっても起きない昏睡状態となったり、痙攣を起したりすることがあります。出血量が激しい場合(血腫が大きい場合)は脳圧が急上昇して最悪死に至ります。命を取り留めたとしても後遺症が残る可能性もあります。出血して固まった血液(血腫)は容易には消えず脳を圧迫し続けることになります。脳圧が高まると、通常凹んでいる赤ちゃんの頭頂部の大泉門が外に張り出してきます。

赤ちゃんを揺さぶって脳出血を起こしても軽症であると気付かないこともあるのですが、固まっていた血液は徐々に溶けて液体状に変わります。つまり赤ちゃんの場合、時間が経つと硬膜下血腫が硬膜下水腫という状態に変わります。これらの状態はMRIなどの検査で分かるため、出血が起きると病理医学的な痕跡として「証拠」が残ることになります。

一方、赤ちゃんの頭の血管はいつ切れるのかといいますと、出産時に赤ちゃんが産道を過する時に切れることもあります。また出産後から1歳にかけてはちょっとした衝撃で切れやすく、強く揺さぶったり、軽く揺さぶり続けると切れることを知っておく必要があります。そしてこのような脳血管の損傷は赤ちゃんが未熟児の場合は余計に起こりやすく十分な注意が必要です。

1.乱暴に高い高いをした。
2.強く揺さぶった。逆さまにした。
3.背中を強く叩いた。
4.伝え歩きし始めた子が転んだ。
5.20分間ゆらゆらと揺さぶり続けた。

1?4の場合のように、ほとんどの場合は一瞬強い衝撃が加わったことによって血管が損傷するか断裂します。しかし5のように、弱い衝撃であっても長時間続くと、金属疲労と同じように徐々に血管に負荷が蓄積して、ついには損傷・断裂することがあります。1?4の場合はその原因が比較的明らかなのですが、5については「泣き止むようにあやしてあげただけ…」として見過ごされてしまう場合があります。

特に注意すべきは、赤ちゃんのご両親が共働きで、赤ちゃんが夜泣きをするようなケースです。このような場合、ご両親が夜中に焦って赤ちゃんを強くあやしたり、寝かせようとして長時間揺さぶり続けると思わぬ結果を招きかねないので注意が必要です。子育てに焦りが禁物な理由は時としてこのような事故を招くことがあるためです。もし共働きのご両親で赤ちゃんの夜泣きがひどい場合は勇気をもって育児休暇を取られることをお勧めします。

夜泣き対策についてはこのブログでも何回か取上げています(参照:赤ちゃんを安眠させるための5つの方法赤ちゃんの夜泣き対策)。要点として、赤ちゃんは生まれる前のお母さんのおなかの中にいた(幸せだった)頃の状態を好みます。赤ちゃんが抱っこされたり抱きしめられたりして適度に体を圧迫されることや、狭い空間を好むことはお母さんのおなかの中を思い出して安心するからです。この点を踏まえてコツをつかむと赤ちゃんを上手にあやしたり寝かせつけることができるようになります。

以上、子育ての参考になれば幸いです。

2011年3月30日薬煎院薬局から

三陸沖の大震災では福島原発一号機が被害を受け、使用済み核燃料や炉心から放射能漏れが危惧されています。福島を中心として関東圏では野菜や水道水が汚染されて大変なことだと思います。

キッズプレイスの関係者の一人として早く混乱が落ち着けば良いと思っていたのですが、むかし放射性物質を使って薬の実験を繰り返していた私としては、昨今のニュースを見聞して、どうにも居てもたってもおられず「むかし取った杵柄」とばかりに少々解説させて頂きます。子育てに役立つものではないと思いますが、拙文をご一読頂ければ幸いです。

テレビのニュースを見ていてほとんどの方は、水や野菜などの食べ物が安全なのかどうかという漠然とした不安をお持ちなのではないかと思います。
不謹慎な例えかもしれませんが、子供がお化けを怖がるのと同じように、大人でもちゃんと判断ができない状況を怖れるように思います。その結果として多くの人が精神的にストレスを感じるようになると思います。
子供の場合、本当にお化けがいればすぐに慣れてしまいますが、同じように放射能汚染も「危険」もしくは「安全」の判断がしっかりとつけば、私たち大人も冷静に行動できるのではないかと思います。

私たちの身の回りにはいろいろな物質があります。原発事故で話題となっているヨード131やセシウム137等をいきなり取り上げて説明しても良いのですが、ここではまず「水素」を例に解説させて頂きます。

水は酸素と水素からできていることは皆さんご存知だと思います。記号では「H2O」と書きますね。
このように水素はごく身近に存在しますが、私たちが単に「水素」と呼んでいるものは、厳密に言えば一種類だけでなく複数の“分身”が存在します。それぞれ水素として性質は同じでも「重さ」が違います。具体的には重さが1、2、3の3種類があります(ちなみにこの重さ(質量)のことを原子量と言います)。

普通に「水素」と言えば重さが「1」のものを言い、自然界では水素全体の99.9%を占めます。これに対し重さが2の水素は「重水素(ジューテリウム)」、3の重さを持つ水素は「三重水素(トリチウム)」という名前がついています。

この重さの違いの理由は少し難しくなりますが、水素の核(原子核)の中に、「中性子」と言う物質を何個余分に抱え込んでいるかによって重さが決まります。一般的な水素は中性子を持ちませんが(0個)、重水素では中性子を1個持ち、三重水素では2つ余分に持っています。

原子核の中に余分な中性子が増えると、当然、原子は不安定となり徐々に壊れて行きます。三重水素(トリチウム)の場合はベータ線という「電子」を放出して約12年かけて半分に減ってしまいます(この期間を半減期と言い、ベータ線を出して原子が壊れる様をベータ崩壊といいます)。

また一般的な水素に対し重水素、三重水素のことを「同位体」と言い、同位体の中でも放射線を出すものを放射性同位体(英語ではradio isotopeと書き、RIと略します)と言います。ここでは三重水素が放射性同位体にあたります(単に放射線を出す物質を放射性物質とも言います)。
重水素と三重水素は自然界に0.1%以下しか存在しませんが、人為的に作り出すことができます。ちなみに三重水素(トリチウム)化合物は私も実験で良く使っていました。

ここで原発の話に戻しますと、原発でウランが核分裂をすると200種類ぐらいの様々な物質が生まれます。その大半はアルファ線、ベータ線、ガンマ線…といった放射線を出します。ニュースで話題のヨード、セシウム、ストロンチウム、コバルト…etc.もこれらの放射線を出します。

放射性物質を考えるとき注意しないといけないのは、相撲でも横綱、大関、関脇、小結、前頭、十両、幕下、三段目、序二段、序ノ口…と格付けがあるように、放射性物質でも人体にとって危険なものからそれほど危険ではないものまで様々あります。
この放射性物質の危険度の“格付け”は、物理化学的性質、放射線の種類、半減期の長さ、体内での挙動…など様々な性質により決まります。一言で言えば様々な要件が多く複雑なことや、状況によって格付け条件が簡単に変わってしまうため専門家でも断定的なことが言いにくいのが本音です。

あくまでも私の独断と偏見による番付をご紹介すれば、例えば先のトリチウムはかなり安全な核種(幕下、三段目ぐらい)と言えます。後述のヨード131は中程度、セシウムやストロンチウム、コバルトと言ったものは大関、関脇、小結クラスではないでしょうか…。

ヨード131に関してはチェルノブイリ原発事故以降に5歳以下の子供で甲状腺癌の発症率が上がったことが疫学調査で分かっており、マスコミも大きく報じていることは皆さんもご存知のことと思います。しかしながら現時点で福島原発から出たヨードの身体への影響はあまり心配する程の量ではないと思います(無論原発施設のごく近隣は除きますが・・・)。理由は幾つかあります。

ヨード131は先述のトリチウムと同じようにベータ線という放射線とガンマ線という放射線を出します。ガンマ線はベータ線より貫通力が高いため細胞や遺伝子を傷つける能力が高い放射線と言えますが、ヨード131は半減期が8日と比較的短いため、測定後どんどん減衰していきます。また数ヶ月や数年といった時間的に長い間継続的に摂取するのでなければ発癌や遺伝への影響はかなり少ないはずです。

一方、私は1961年生まれですが、私が生まれた頃は今の福島原発より放射能汚染が深刻で危険な時代でした。当時は米ソの核開発が盛んな時期で大気圏中で核実験が繰り返し行われ、人類はヨード131より遥かに危険なセシウム137、ストロンチウム90、コバルト60…etc.と言った「死の灰」が混じった大気を毎日吸っていました。当時の日本人の成人がセシウムを体内に取り込んだ量はチェルノブイリ事故当時の10倍に迫ります。これは凄いことです。
にもかかわらず60年代に幼少期を過ごした私や当時子供だった人は今でも元気に生きています。

福島原発から出た放射能物質の灰は未だチェルノブイリより遥かに少ないのですが、3月21日、22日の降雨時に東京では核開発の最も盛んだった1963年の記録を一過性に上回りました。これは大変由々しきことです。
しかしそれでも繰り返して起こるのではなく、一過性の範囲内であれば危機的状況とは言えません。これ以上福島原発から死の灰が降らず、一過性で収まれば雨が降るたびに灰も自然と薄まることが期待できます。

今は福島原発が深刻な状況にありますが、このような事故が起きる前であれば、私たちはラジウム温泉やラドン温泉と言った温泉に気楽に出かけたのではないでしょうか。ラドン222はラジウム226からできる気体の放射性物質ですが、ラドン濃度の高いところで深呼吸すれば当然「体内被曝」します。実際、昨今の機密性の高いマンションではコンクリートや土壌から出てくる自然放射線による体内被曝の原因の半分をラドン222が占めています。

これは怖いことのように思いますが、一方でラジウム温泉やラドン温泉がリウマチや神経痛などの療養に良いことも事実です(放射線ホルミシス学説)。

このように放射性物質は危険と安全(有用性)の紙一重の性質を持っており、それらの性質を正しく理解し上手に使いこなして行く事が必要です。三陸沖地震を発端とする福島原発の事故は残念な事故ではありますが、一刻も早く終息するとともに、この苦い教訓が将来の安全な放射性物質の平和利用につながることを切に願っています。

また放射性物質について注目が集まっている今ですが、私たちの身の回りには放射性物質より怖い化学物質、いわゆる「環境ホルモン」が沢山あります。放射性物質は特定し、数値として計測することができますが環境ホルモンは特定すら難しい状況です。放射性物質ばかりに目を奪われて「木を見て森を見ず」とならないよう、子育て世代のお母さんお父さん方は常にアンテナを張って気をつけるべきかも知れません。

最後に放射性物質について分かりやすく解説された放射線科学センターのホームページをご紹介します。このサイトの「暮らしの中の放射線」は特におすすめです。身近に存在する放射性物質の性質や死の灰の影響についても分かりやすく解説されています。

放射線科学センター http://rcwww.kek.jp/index.html
暮らしの中の放射線 http://rcwww.kek.jp/kurasi/index.html

薬煎院薬局から

icon_redface.gif猛暑で暑い日が続いていますね、今年は熱中症で病院に運ばれる人も例年より多いようですね。
久しぶりにキッズプレイスの薬局から、(ひょっとしたら)子育てに役立つかも知れない?話題をひとつ書かせて頂きます。icon_biggrin.gif

後で知ったことですが、以前私が書かせて頂いた記事がOKwaveなどで参照されているようです。気楽に書いたつもりでもネットの世界では知らぬ間に参照されることも起こりえますので、ちゃんとした論文などを調べて出典を書いた方がいいかな…、とも思います。
しかし今は単純に忙しいので、そのようなことはやめます(笑)。
ちなみに、しっかりとした医学文献などを調べたり、また読んでみたい方は、(私も昔よく使っていましたが、)ほとんど英語になりますが米国立医学図書館のPubMedなどが無料で使えてお勧めです。世界中の医学、薬学、生物学etc.の文献を参照でき、最新の遺伝子配列情報なども検索できます。

冒頭話が脇道にそれてしまいましたが、閑話休題です。私の娘は3歳になりますが、冷蔵庫で作った「角氷」を食べることが大好きです。ただ水を凍らせただけで何の味もしない氷ですが、歯ごたえが堪らないのか大好物で(2?3才くらい小さい子は好きな子が多いようです)、アンパンマンのコップで沢山角氷の入った麦茶を飲むことが風呂あがりの娘の毎日の日課となっています。
あまり与え過ぎてはいけないと考えて、与えないでいると20?30分泣き叫んで抗議するので、こちらも根負けして氷をあげてしまいます。
最近では親の目を盗んで、自分で冷蔵庫の製氷室をあけて勝手に盗み食いする始末ですicon_lol.gif

親としてはこのまま氷を与え続けていて大丈夫か…、氷を食べ過ぎると体が冷えて胃腸が弱くなるのではないかと心配になります。
しかし娘が氷を食べている音を聞くと、カリ、コリと、とても心地よい音がします(笑)。

話が変わりますが、娘の顎のあたりを手で触ると、顎が鋭角です(尖っています)。これは成長すると顎が小さくなる可能性があります。(顎が大きくなる子供は顎の先端が尖っておらず、丸みを帯びているので区別が付きます。この辺の区別の付かない方は歯医者さんで調べてもらうと良いと思います)。
つまり娘は、親(私icon_exclaim.gif)に似て顎が小さく、このまま成長すると歯並びも悪くなる可能性があります。特に最近の子どもたちは軟らかい食べ物を好んで食べる傾向があるため、永久歯がはえるに従って「乱食歯」になる可能性が大です。

当然ながら歯並びの悪さは容姿的にも良いものではありませんが、事はそれだけでは済みません。
歯並びが悪いと歯の隙間に食べ物のかすが貯まりやすいため虫歯の進行を速め、歯槽膿漏の原因となりかねません。また歯のかみ合わせが悪くなることによって、将来、「背骨」が曲がるリスクが高まりますicon_eek.gif。奥歯をシッカリと噛みしめることが出来ないと瞬間的に力を出すことができず運動能力にも影響がでてきます(一流のスポーツマンには歯並びが悪い人は少ないと言われています)。
背骨が曲がるとバランスのとれた筋肉の発達が望めず、余計な筋肉の緊張を招くことになり将来「頭痛持ち」の原因にもなりかねませんicon_redface.gif
しかし「顎が小さいこと」によって一番怖いことは、将来的に睡眠時無呼吸症になるリスクが高まることです。

顎が小さいと寝ているときに舌(ベロ)が喉の奥に落ち込みやすくなり、空気の通り道が狭くなって呼吸困難(睡眠時無呼吸症)を招きやすくなります。この睡眠時無呼吸症については、医学的な研究が進んでおり、この「病気」になりやすいのは肥満体質に加えて、「顎が小さい人」と言われています。

睡眠時無呼吸症になるといくらたっぷり寝ても疲れが取れません、またいつも日中眠たいため集中力も低下してきます。重症になると昼間でも突然、瞬間的に寝てしまうことがありますicon_eek.gif。私の知人も車を運転していて突然ガクンと寝てしまい、事故にあって2度死にかけた人がいます。

?小さな子どもの場合は睡眠時無呼吸症を考える必要はありませんが、お子さんが成長するに従って発症のリスクが高まります(若年性肥満が加わるとリスクがさらに高まると考えられます)。高校や大学ぐらいであれば、当然学校の成績にも影響が出ることが考えられます。また将来的に上の例のように命に危険を及ぼすことも起り得ます。

顎の小さいお子さんにとっては、特に永久歯が生える前に顎をシッカリと鍛えて少しでも顎を大きくしておくことは大切なことと言えます。

このような背景もあり、私は自分の考え方をあっさり変えてしまいましたicon_wink.gif
ひょっとしたら「顎」を鍛えるために有効ではないかと思って皆さんにもお勧めしたいのですが、顎の小さい3歳くらいまでのお子さんには「角氷」を与えてみてはいかがでしょうかicon_surprised.gif

1.5cm角の氷ぐらいの大きさになると、大人でも奥歯で「ガッリ」と砕くしかありません。これは顎を鍛えるにはちょうど良い刺激になります。硬いお煎餅や「皮付きのスルメ」を与えるという手もありますが、氷であれば歯垢が溜まることもなく、夏場ではちょうど良い水分補給にもなります。それに角氷はお煎餅やスルメと違ってほとんどコストがかからず、お腹が膨れることがありませんから比較的いつでも与えられます。

問題点として、お子さんが角氷を嫌いだと役に立ちませんが、スポーツドリンクなどを凍らせて角氷を作ると、味が付いてカリコリ食べれるかもしれませんね。

この夏は9月を過ぎても残暑が厳しいらしいので、娘には角氷を沢山あげようと思います(笑)。

 ここで若干専門的な私論を書かせていただきますicon_mrgreen.gif。顎が小さい人で睡眠時無呼吸症の症状がない人も沢山いると思いますが、そのような人は寝ている時に上側ではなく右向きや左向きなど、どちらかを横を向いて寝ていることが多い人ではないかと思われます。枕や布団などの寝具があっているかどうかにもよりますが、このような寝方が習慣になると背骨が曲がりやすくなるのではないかと私は考えています。つまり顎が小さくて背骨が曲がる原因の一つとして、睡眠中に安定して呼吸を確保しようとして無意識に横向きで(決まった方向を向いて)眠る癖がつき、このために背骨が徐々に変形していくように思えます。   この仮が正しいかどうかはきょうみのあるところであり、今後の専門家の研究結果を待ちたいと思いますicon_wink.gif

2010年4月9日薬煎院薬局から

このブログでは、キッズプレイスの保育園のお子さんの様子を紹介しておりますが、今日は薬局から子育て世代のお母さんとお父さんに役立つ(?かも知れない)話題提供です。icon_rolleyes.gif

キッズプレイスの薬局では色々な相談があります。中でも最近多いのはストレスについての相談です。うつ病気味で悩まれている方、夜なかなか眠れなくて病院で処方された睡眠導入剤を服用されている方や、ストレスでお腹が下痢気味の方、不妊症に悩まれている方、お子さんの疳の虫…など実に様々です。漢方薬の中にも不眠やイライラなどを鎮める処方があり、体質があっていると良く効きます(これらの処方は脳の中枢神経に直接働くことはなく依存性などはおこりません)。しかしお薬に頼るよりも前に、上手にストレスに対処する事に越したことはありません。そこで本日のタイトルの話題提供を思いつきました。icon_wink.gif

読者の皆さんは男性と女性ではストレスを受けた後の行動に大きな差があるのはご存知でしょうか。意外に知らない方が多いのですが、知らないと子育てを含めたいろいろなストレスに上手く対応できずに、家庭に亀裂が入るということもあり得るかも知れません。

要点を先に書きますと以下の通りです。
 男性はストレスを受けると、考え込むことによって気持ちを落ち着かせようとします。⇒考え込むことによってリラックスします。
 女性はストレスを受けると、誰かに話すことによって気持ちを落ち着かせようとします。⇒話すことによってリラックスします。
(この場合、男性も女性も成人を想定しています)

つまり男性と女性ではストレスに対する対処が違うということです。もちろんこの話は男性と女性という大まかなくくりによるもので、細部についてはそれぞれの個性や生まれ育った環境によって十人十色の違いがあります。

例を挙げてみましょう。icon_eek.gif
ご主人が会社から帰宅して、普段より極端に口数が少ない時にどういうことが考えられるでしょうか。お酒を飲み過ぎて頭がボーっとしていることや隠し事(浮気?!)なども考えられますが、単に仕事でストレスが溜まって自分なりに気持ちを落ち着かせようとしているかも知れません。この特性を理解していないと、奥さんはご主人のことを勘ぐったり、「無口で冷たい」と捕えるか、あるいは自分への愛情が冷めたのではないかと不安になって余計にご主人に話しかけるかも知れません。しかし、ご主人が(浮気などでなく)本当に仕事のストレスで悩んでいるときは、これは逆効果で、考える時間が欲しいご主人を余計イライラさせる結果となって喧嘩になるかも知れません…。

逆に、子育てなどでストレスが溜まった奥さんは、そのストレスを、帰宅したご主人と会話することによって解消しようとします(近所に親しい友人がいて、いつもお喋り出来ている場合は別です)。このことをご主人が理解していないと、上手に奥さんのストレス解消の相手役になってあげることが出来ません。仕事のこをと忘れて、奥さんの悩みやお子さんの話などを聞くことは、幸せな家庭作りのためにも大切なことを(世のご主人方は)肝に銘じておく必要があります。

より役に立つ具体的な対処法は色々な書籍などを参考にして欲しいのですが、思いつくことを簡単に述べておきます。
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男性が仕事や仕事上の対人関係などのストレスを抱えて帰宅してきたときは、そっとしておいて上げるのが一番良いかもしれません。自分なりに考えて結論を出すことが出れば普段のご主人に戻ると思います。しかし、もしいつまでも考え込んでいるようでしたら、これは大問題で、過労やうつ病の前兆かもしれません、お医者さんなどの専門家の門をたたく必要があります。

一方、奥さんが家事や子育ての悩みを抱え込んでいるときは、ご主人は奥さんの悩みを積極的に聞いてあげることが必要です。その際の「コツ」は、問題解決の方法を提示したりするのではなく、「考え方に同意(同情)してあげることです」。男性はとかく問題解決の方向に走りがちですが、ほとんどの場合、女性は問題解決法を知る以上に、自分の気持ちを知って欲しいと考えていることが多いようです。この点はとても大切なポイントです。

余談となりますが、女性の脳は、右脳と左脳を結ぶパイプ(脳梁 のうりょう と言います)が男性より太く、右脳と左脳の間で短時間に大量の情報を交換することができます。女性が男性より勘が鋭いのはこのためとする説があります。一方で短時間に情報が一気に流れるため情報が混乱しやすい(ヒステリックになりやすい)とも言われます。ご主人が浮気などの隠し事をして悩んでいるのか、それとも仕事のストレスで無口になっているのかは、奥さんが右脳と左脳の情報交換能力の高さを駆使して勘を働かせるとすぐにわかると思います。
一方、男性は脳梁が女性より細く、その分柔軟な考え方が苦手な人も多いとも言えます。歳を取るに従って頭が固くなると言いますが、女性の話をじっくりと聴く包容力(柔軟性)を低下させないためにも「脳トレ」が必要かもしれませんね。icon_confused.gif

今回の話題は子育てとは程遠いお話でしたが、現代社会にはお母さんお父さんを取り巻く様々なストレス要因が溢れています。上手く付き合うことによって家庭を守り、子育てのストレスも乗り切っていただきたいと思います。

2010年3月17日薬煎院薬局から

以前、このブログにて、虫歯がインフルエンザや伝染病などと同じ「感染症」であることを紹介しましたicon_rolleyes.gif。子供の虫歯は成長するに従って自然と虫歯になっていくのではなく、赤ちゃんの時に大人や兄弟から虫歯菌をもらう(感染する)ことによりおこります(虫歯が発症します)icon_eek.gif

虫歯は、赤ちゃんの口の中の細菌の分布状態(専門的には口腔フローラと言います)が決まる2歳ころまでの間に、外部から虫歯菌が感染することによって起こります。
赤ちゃんがお母さんのおなかの中にいる時、赤ちゃんの口の中は無菌状態ですが、お母さんの産道を通りオッパイを吸ったときから、赤ちゃんの口の中に細菌(乳酸菌など)が住みつくことになります。

ヒトの皮膚や口の中、また腸などには、様々な種類の細菌が住みついていて、これらを常在細菌と言います。つまりヒトは様々な種類の細菌と共存しており、常に無菌状態でいるわけではありませんicon_neutral.gif

口の中の細菌の種類や数の割合は生まれてから1歳半から2歳ぐらいの間でほぼ決まってしまい、それ以降は歳をとっても急に変わることはありません。生まれてから口の中の細菌の種類や数の分布が決定する2歳ぐらいまでに虫歯菌が口の中に大量に入ってこなければ、それ以降に例え虫歯菌が入ってきても、住みつくことは出来ず感染が成立しません。最初から住みついていない限り、突然入ってきたよそ者(虫歯菌)はそう簡単に住みつくことができないという訳です。

このため、赤ちゃんが生まれたら、2歳ころまで食事などの口移しはしない方が良いかもしれません(少なくとも注意が必要かもしれませんね)。2歳を過ぎれは例え虫歯の人から口移しをされても虫歯菌が感染して虫歯になることはありませんので、出来ればそれまで我慢された方が良いと思われます。

ここまでは以前のブログ記事のおさらいですが、もう1つ5歳くらいまでに気をつけないといけないことがあります。それはピロリ菌の感染ですicon_eek.gif

先日NHKの番組(ためしてガッテン)でも放送されていたので、ご覧になった方も多いと思いますが、ピロリ菌は将来、胃潰瘍や胃がんの原因となる細菌で注意が必要です。ピロリ菌は酸性の強い胃の中に住むことが出来る特殊な細菌で、正式名称は「ヘリコバクター・ピロリ」といいます。

ピロリ菌は誰の胃の中にもいるわけではなく、特に50才以上の方に多いことが統計学上分っており(約7割)、ヒトからヒト、動物からヒトへと感染します。以前は病院で胃カメラを撮影した時に、胃カメラ本体の消毒が不十分であったため、病院を中心として感染が広がったことがありますが、今では消毒が徹底されているためこのようなことはありません。

最近の若い人では感染率が少ないのですが、それでも完全にゼロではありません。詳しい感染経路はいまだ不明ですが、考えられる感染経路として、生まれてから5歳ぐらいまでの間に保菌者(ピロリ菌を持つ人)から食事の口移しなどで感染する可能性が指摘されています。その他には、動物との接触(唾液や糞を介した感染)などが考えられます。私は犬好きですが、やたら口を舐めたがるワンちゃんには少々注意が必要かも知れませんicon_lol.gif

虫歯菌を除菌することは非常に厄介ですが、ピロリ菌は抗生物質でほぼ除菌することか出来ます。その意味では虫歯菌よりピロリ菌の方がまだマシなのかも知れませんが、感染を知らずにいると将来胃潰瘍や胃がんとなる可能性もあり、留意する必要がありそうです。

赤ちゃんへの離乳食の口移しや小さいお子さんへの口移しは、親から子への愛情表現でもあるため、一概に否定することはできませんが、子供たちの側から考えると口移しによる愛情表現より他のスキンシップの方が嬉しいかもしれませんね。

以上、今後の子育ての参考にして頂ければ幸いですicon_biggrin.gif

参考情報:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』ヘリコバクター・ピロリ

2009年9月26日薬煎院薬局から

icon_surprised.gificon_razz.gif キッズプレイスではこれから年末にかけていろいろな行事があります。秋の親子遠足、12月の発表会、クリスマス会などです。現在、長丘園と平尾園の先生方は遠足をどこにしようか、どんな遠足にしようかと計画中です。去年は長丘園の親子遠足があいにくの雨で室内でのレクレーションとなりましたが、今年は晴れて外で沢山遊べるとよいと思います。

 そんな忙しい先生方に代って、キッズプレイスのブログの役に立つべく、私ごとで大変申し訳ないのですが、9月のつらい出来事を書かせて頂きます。ちなみに、「私」とはキッズプレイスの薬局の薬剤師(通称カンポウ先生、男性)です。icon_neutral.gif

 実は9月は、これまで私を支えてきてくれた同じ薬剤師の母に先立たれ、私にとってはとても悲しい月となりました。今年の2月に黄疸が出て自宅の近くの病院で診察を受けたところ膵臓ガンと分かり、福岡市の中心部にある済○会病院に緊急入院したのですが、今月7日に他界しました。入院してわずか7か月ほどでした。享年73才でしたので、女性の平均寿命より10年以上短く、そのことが悔やまれます。icon_cry.gif

 膵臓ガンは特に分かりづらいガンで、発見された時には手遅れということが多いのですが、母の場合は幸い他の臓器への転移が見られないStage Iでしたので、腫瘍さえ摘出すれば5年以上生きられると思われていました。膵ガンの5年後の平均生存率は10%程度ですので、運が良いと家族は喜んでいたのですが…。

 私は製薬会社で7年ほど消化器系の薬剤(新薬)の探索研究を行っていましたので、国内外の学会にも良く出かけていました。それゆえ病院のドクターがどのような処置を行い、何の目的でどのような薬物を投与したか、およその意図が分かります。

 話が専門的になりますので途中は端折りますが、読者のみなさんには『重い病気であるほど、患者である私たちは、“名医”を探す努力を惜しんではいけない』ということを強くお伝えしたいと思います(名医とは優れた技術を持ち、患者の気持ちを分かる医師と思います)。
 そのような努力を怠っていなかったら、ガン以外の原因で母を失うことはなかったと思うからです。今ではいくら悔やんでも母は戻っては来ませんが、後悔しきりです。?

暗い話題となりましたが、嬉しいことも一つありました。icon_smile.gif
 私の薬局にはお子さんが欲しくてもなかなか出来なくて相談されに来るお客さんが少なくありません。
 これまでも多くの方にお薬(漢方薬)を処方して不妊治療を行って参りましたが、今月になって、あるお客様から妊娠されたとの嬉しいお便りを頂くことができました。その方は福岡の方ではないのですが、このブログを紹介したため、ひょっとしたらこの記事をお読みになるかも知れませんが、憔悴していた私にとって妊娠されたとのお便りを頂くことができて、とても勇気づけられました、ありがとうございました。

 消える命があれば、新しく生まれる命もあることは自然の節理ですが、今はその方の赤ちゃん(新しい命)が無事に誕生されることを願わずにはおられません(次の嬉しい便りを心よりお待ちしております)。

 最後に、忙しい中、母のお通夜に会葬して頂きました関係者のみなさん、スタッフのKさん、また保育園のAちゃんのお母さんとお父さんに、この場を借りまして再度、厚くお礼を申し上げます。ありがとうございました。

2009年8月16日薬煎院薬局から

😯
前回は小さなお子さんの水分補給について記事を書かせて頂きましたが、今日のお話はその続編として、子育て世代のお母さん、お父さんの水分の過剰摂取の落とし穴について書かせて頂きます。

小さいお子さんや高齢者の方には、熱中症の予防のため、特に夏場は小まめな水分補給が必須となります(前回のブログ記事を参照されて下さい)が、しかしだからと言って必要以上の水分の摂りすぎは体にとって決してよくありません。
水分の過剰摂取は秋以降にかけて体の変調となって現れてきますが、これらの変調は小さいお子さんより、むしろ子育て世代のお母さん、お父さんで顕著に現れます。
そこで今日は、子育て世代のお母さん、お父さんの水分の過剰摂取に焦点を当てて書かせて頂きます。健康のために意識して1日2?3Lの水を飲まれている方などは、特にお読み頂きたいと思います。

キッズプレイスの薬局では、最近、体がだるい(倦怠感)、気力がでない、汗を多くかく(多汗症)、食欲不振、アトピー性皮膚炎、花粉症、めまい、耳鳴り、冷え性、むくみ、軟便などを訴えてこられるお客さんが多いです。

特に上記のような症状がある方に、「水分を多く取られていますか?」「汗かきですか」などと質問することがあるのですが、そうするとおよそ7?8割の人が「どうしてですか?」「そう言えば水(お茶、ビール)をよく飲みます(飲むのが好きです)」という答えが帰ってきます。中には「友達から1日1.5?3Lの水を飲むようにすすめられて、頑張って飲んでいます」、「最近体が疲れて気力が湧きません」などの答えが返ってきます。
尋ねられたお客さんにしてみれば、症状を聞いただけでどうして分るのだろうと不思議がられますが、上記の症状が2つ以上あてはまる場合、この質問が良く当たります。この問いを投げかけることにより、患者さんが東洋医学(漢方)で言うところの「水毒症状」であるかどうか、およその察しがつきます。

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水毒症状とは、漢方でよく耳にする言葉ですが、簡単に言えば体の中の「水」の要素のバランスや循環が崩れている状態を言います。この状態に陥ると、一見すると互いに関連性のないようないろいろな変調が体に現れて来ます。

漢方で体の状態を診る時の着目点の1つとして「気・血・水」(き・けつ・すい)があります。初めて聞かれる方にはなじみのない言葉ですが、特に難しいことではありません。紙面の関係もあり、ここでは簡単にご紹介します。
「気」というのは、生命を維持していくために体が持つエネルギーのことです。元気の「気」と同じで、これが低下すると病にかかりやすくなります。また体の中で気の分布が偏ると、例えば上半身への偏りであれば「のぼせ」などとして現れます。
「血」とはそのまま体の中を流れる血液のことを指します。むかしから婦人病のことを「血の道症」といいますが、婦人病では子宮を中心とした血液の循環が滞ると(この状態を「お血」と言います。)生理痛や不妊などの症状となって現れます。
「水」とは、リンパ液、消化液、汗、唾液、尿など、体の中の血液以外の体液を言います(水は津液とも言われます)。
これら3つは密接に関連し合っているのですが、中でも「水」の過不足が起きたり循環が滞ったりすることを「水毒」といいます。
水毒がひどくなると、リンパ液、消化液、汗、唾液、尿などの「水」の要素をキーワードとした様々な症状が現れるようになります。

例えば、リンパ液は免疫に深くかかわる「水」の要素ですが、これに変調が及ぶと花粉症、アトピー性皮膚炎、喘息、リウマチなどの免疫系の疾患となって現れてきます。またリンパ液は平衡感覚をつかさどる耳の奥の三半規管の中にもある為、めまいや耳鳴りといった症状に波及します。
同じ「水」でも消化液に変調が及ぶと胃潰瘍、胃下垂、過敏性腸炎などが起こり、食欲が落ちたり軟便が続いたり便秘と下痢を繰り返すなどの症状をともなうことがあります。また汗や尿の変調は多汗、冷え性やむくみとなって現れます。

🙄
最近の水毒症状の方の共通点として「水分摂取量が多い」ことが挙げられます。喉が乾きやすく(これを口渇[こうかつ]と言います)水分を摂ることが「癖」(生活習慣)になっている方や、「水分をたくさん取ると健康になれる」と信じてしまっておられる方が多いようです。
確かに痛風などの病気で尿酸値が高く、体の中の尿酸の排泄を促進するためにお医者さんから水を良く飲むように言われている方もおられると思いますが、そうでなければ注意しないと水毒症状のフルコースを歩む危険性があります(経験的に水毒症状はいま現れていなくても、いずれ順を追って現れることが多いようです)。最も怖いのは、体力と気力が減退して「うつ病」などの精神症状もしくはその一歩手前まで行くことです。

ここで大切なことは、水分を摂取することが悪いと言うことではありません。夏場は特に水分をこまめに取ることが必要ですが、それに乗じて、または間違った情報を信じて水分を「摂り過ぎること」によって思わぬ症状(水毒症状)に陥ることの警鐘を鳴らしたいのです(その理由として、上記のような相談が最近特に多いためです…)。
特に1日に2Lぐらいミネラルウォーターをペットボトル単位で飲まれている方や、喉が渇いて、ジュースやお茶、お酒などを一度に沢山飲まれる傾向のある方などご注意頂きたいと思います。

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水毒については、本当であればもっと丁寧に書かなければならないと思うのですが、歯止めが必要と思っています。つまり、このブログに書くことが場違いという自責の念に加え、量的にとても書ききれません。もし上記のような症状で思い当たる節がある方がおられましたら、お近くの漢方薬局(もしくは漢方外来のある病院)に行ってみてください。精通された先生なら1?2時間ぐらいかけて解説して頂けると思います。そこまでしなくてもさらに詳しい情報を知りたい方は、インターネットを検索するか、本屋さんで漢方についてやさしく書かれた解説書などを読まれることをお勧めします。

😉
最後に余談ですが、漢方では水毒症状の患者さんに対して「利水剤」「駆水剤」というような生薬(もしくは処方)を用いてこれを治療します。このような知識を持って漢方薬局(もしくは病院)に行かれると、(あくまでも推測ですが)診る方の先生も「この患者さんはただ者ではない…」とより真剣に見てもらえるかもしれません。

夏真っ盛りで水分摂取が多くなりますが、摂り過ぎを注意して頂いて、秋以降の体調維持の参考にして頂ければ幸いです。

2009年7月17日薬煎院薬局から

😯
キッズプレイスには保育園の他に薬局があります。保育園の行事の隙間を埋めるように、時折、子育てに役立つと思われるトピックスを薬局のスタッフが紹介しています。
しかし、その内容はスタッフの独断と偏見に基づいたものですので、すべての方に役立っているかどうかは分りません…。さらに、ブログの記事は多角的に分析するなど周到に準備して書いているのではなく、どちらかと言えば少々軽い気持ちで書かせて頂いていますので、内容について100%保障することができません。このことを頭の隅に入れて頂いて、以前ブログに書いた記事を読まれた読者の方からから頂いた質問にお答えいたします。

😐
質問は、このブログでも2回ほど取り上げています「インフルエンザに麻黄湯」についてで、「風邪のひき始めに良いと言われている葛根湯と麻黄湯ではどちらがインフルエンザに良いですか?」というものです。数日ほど前に直接メールで質問を頂きました。この質問はとても良い質問でしたので、質問者に了解を得てブログでお答えするようにしました。

😕
早速、回答を書かせて頂きたいところですが、前置きを2つだけ書かせて頂きます。

1.ブログでキッズプレイスでは、いたずら防止の目的で、ブログへの質問を直接行えないようにしております。このため、直接電子メールで質問を頂きました。質問を頂くということは、読んで頂いている読者の方がおられるということで、書き手としてはとても嬉しいことです。T様ありがとうございました。

2.漢方についての質問は、本来、子育てと関係ないように思われがちですが、漢方薬は重篤な副作用が少なく、お子さんの病気などにも良いと信じて書かせて頂いています。しかしながら病気に関して、少なくとも私はお子さんの病気を直接見ることができませんので、記事を鵜呑みにすることなく主治医の先生の指導に従ってください。

🙂
お待たせしました、麻黄湯と葛根湯についてお話します。
この2つの処方には、生薬の「麻黄(マオウ)」が含まれていて、インフルエンザのひき始めに服用すると、新薬の抗インフルエンザ薬と同じぐらい効果があることが学会で報告されています。

ではどちらが良いのでしょうか。
麻黄湯と葛根湯は、良く似た処方ですが症状や体質によって使い道が若干違います。
これらの処方は、今から2000年ぐらい前に書かれた漢方の古典「傷寒論(しょうかんろん)」という書籍に書かれています。解説は割愛しますが、詳細を知りたい方は傷寒論について書かれた解説書を読まれることをお勧めします(傷寒論自体は漢文で書かれています)。傷寒論には私の偏見が入らない漢方の奥義が書かれています(ここでは「証」などの考え方を使わずに解説します)。

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“一般的に、”漢方薬は、含まれる生薬の数が少ないほど作用の切れが強くなります(強く作用します)。普通に考えると生薬の数が多いほど、いろいろな成分が作用して病気に効きそうな気がしますが、実際は逆と言えます。漢方薬は生薬の数(これを薬味と言います)が少ないほど、含まれている生薬の効果がストレートに出やすくなり、薬味が多いほど互いの効果が緩和されてマイルドになります。

麻黄湯は、麻黄(マオウ、4)、桂皮(ケイヒ、4)、杏仁(キョウニン、3)、甘草(カンゾウ、1)の4つですが、
葛根湯は葛根(カッコン、8)、麻黄(マオウ、4)、生姜(ショウキョウ、1)、大棗(タイソウ、4)、桂皮(ケイヒ、3)、芍薬(シャクヤク、3)、甘草(カンゾウ、2)の7つです。括弧の数字は生薬量を示しています。

このことから麻黄湯は葛根湯より作用が強く現れやすいことがお分かりだと思います。

麻黄湯ですが、体力があって胃腸の強い人に適しています。このためお年寄りや、体力の消耗が激しい場合などには慎重を要します(後述の汗をたくさん書いている状態も体力の消耗が激しい状態に相当します)。
さらに麻黄には心臓の働きを高める成分が含まれているため、心臓疾患や高血圧の治療を受けている方が服用される場合は医師または薬剤師に相談すべきです。一方、葛根湯は麻黄湯より体力がなく、どちらかといえば胃腸の弱い方に向いています。

😳
葛根湯は胸から上の炎症を抑える効果に優れ、肩こりや、風邪(インフルエンザ)による筋肉や関節の痛みがある場合、喉や鼻の痛みなどがある場合に効果的です。また下痢などの症状があるときも葛根湯が適しています。
葛根湯には生姜(ショウキョウ)という生姜(しょうが)を乾燥させたものが入っていますので、これが大棗(タイソウ)などの生薬と奏功して体を温めてくれるので、悪寒がするような時にも効果的です。

葛根湯も麻黄湯も汗を出すようにして病気を治しますが、特に麻黄湯はこの作用(発汗作用)が強く出ますので、既に汗がたくさん出ている人に飲ませると体力を消耗することになり良くありません。

😯
葛根湯と麻黄湯に含まれる「麻黄」には、A型インフルエンザウイルスに対する増殖抑制効果が実験的に認められており(学術文献;Mantani, et al: Antivir Res: 44(3); 193-200, 1999)、この力をインフルエンザに生かすためには、薬味の少ない麻黄湯の方が向いていると考えるのは道理だと言えます。しかし、胃腸が弱かったり、下痢気味であったり、体力がない場合や筋肉のこわばりなどの症状がある場合は葛根湯がおススメです。

一方、さらに体力のない高齢者などには、葛根湯より「麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)」が良い場合があります。
麻黄附子細辛湯は、麻黄(マオウ、4)、細辛(サイシン、3)、附子(ブシ、1)が含まれています。

😳
これは麻黄湯よりさらに薬味が少ないので、麻黄の作用が現れやすくなっています。
麻黄湯より薬味が少ないので、さらに体力がある方むけの処方のように思われがちですが、「附子」が含まれているため、体力のない方むけの処方となっています。この附子とは、猛毒を持つトリカブトの根を乾燥させたものですが、煎じることによってその毒性は1/1000?1/2000まで減じられ、虚弱な方にエネルギー(気)を与え体を温める作用をもたらします。漢方薬の中で、この附子が入っているものは、虚弱体質の方向けの処方が多いです。
麻黄附子細辛湯の麻黄と附子に含まれる成分は、血圧を上昇させるように働くため、高血圧気味の方には使えません。

長くなりましたが私が知っていることで、頭の中に思いつくところを書きました。参考になれば幸いです。
次回は、以前予告しておりました、水分摂取と水毒の2回目について近日中に書かせて頂きます。

2009年6月17日薬煎院薬局から

😕
キッズプレイスでは7月から子どもたちの楽しみの「プール」が始まりますが、福岡では梅雨入りが宣言されたにもかかわらず?、どういう訳か雨が降りませんね。これには少し困ったものです…。

小笹長丘園でも平尾大楠園でも園児さんは園内でみんな元気に走り回っています。遊びまわっている子供たちはいつも元気いっぱいで、園内では汗だくになっています。赤ちゃんも、この季節になるとたくさん汗をかいています。

🙄
今回は2回に分けて、(1)子供たちに必要な水分補給と、(2)お母さんやお父さんの水分の摂りすぎによって起こる「水毒」について書かせて頂きたいと思います。

<子供たちに必要な水分補給について>
小さなお子さんを持つお母さんなら、子育てのための雑誌や育児書で小さなお子さんが脱水症状になりやすいことを一度は目にされたことがあるのではないでしょうか…。

2歳未満の子供をお持ちのお母さんは、特に夏場の脱水症状に気をつける必要があります。

大人であれば腎臓によって体外に排出される水分量、つまり「おしっこの量」を調整して、体内の水分量をコントロールできるのですが、子供はこのような腎臓の水分調整機能が未発達なため(大人の約半分程度)、体中の水分が余計におしっことして出てしまい脱水状態が起きやすくなります。

😯
大人でも24時間水分を取らないと、死にそうなくらい喉が渇くと思いますが、赤ちゃんではこの大人の24時間が7時間くらいの時間に相当します。つまり赤ちゃんは大人の3?5倍のスピードで体の水分が不足していきます。具体的な量では、大人の1日の水分必要量が、体重1kgにつき30-50mLとなっていますが、生後1ヵ月から1才未満の乳児で120-150mLです。また1才から6才の幼児で100-120mLとなっています。
(上記の水分量は食事から摂る水も含まれます)

もし夜中に一度も起きない親孝行な赤ちゃんがいたら、それは大人でいえば24時間以上水分を取っていないことになります。そう考えると赤ちゃんが喉が渇いて夜泣きをするのも仕方ないと納得できるかも知れませんね…。ちなみに我が家では、娘が赤ちゃんだった頃、寝る前に欲しがるだけミルクを飲ませていました。ほとんどミルクを飲みながら寝てしまっていましたが、夜泣きをすることがほとんどありませんでした。

水分が失われるときに、同時に塩分も失われます(特にナトリウムイオン、記号ではNa+と書きます)。ヒトの血液は100mL当たり0.9gの食塩を溶かした水と同じぐらいの濃さがあります(正確に言うと血液とおなじ浸透圧があります、生理食塩水とも言います)。海水よりは薄いので無理して飲めないことはありませんが、飲料用としては塩分が濃すぎます。
子供たちには乳幼児用イオン飲料などが売られているので、このようなものがお勧めですが、お金をかけなくても家で作った麦茶にほんの少量の塩を(100?200mLに耳かき0.5?1杯ぐらい)入れるとよいかも知れません(ただしこれは夏場の暑い時だけにしておいてください)。

😀
夏場は水分補給の他に、できるだけ新鮮な果物を食べるとよいと思います、天然型のビタミン、水分、糖分、塩分に加え、ポリフェノールやクエン酸などの体に良い有機酸などをたくさん摂ることができます。

😳
以上のように、小さな子供達には、夏場の水分摂取が特に大切ですが、同様に大人でも小まめに水分補給をすることが、熱中症などの予防の観点からも大切になります。
しかし、大人の場合は、水分をむやみやたらに取り過ぎると思わぬ“副作用”があります。

最近は、マスコミの影響なのか「血液さらさら」であることがブームとなり、1日に1.5Lや2L、はたまた3L?の水分を取ることが良いように言われていますが、やはり「過ぎたるは及ばざるがごとし」の格言通り、徐々に水毒症状が現れてきます。

😯
次回は過剰な水分摂取が招く、「水毒症状」についてブログを書かせて頂きます。

2009年5月20日薬煎院薬局から

🙁
今年の初めに季節性のインフルエンザについてブログの記事を書きましたが、5月に同じような記事を書くとは思っておりませんでした。この記事を書き始めた時点では、ブタ由来のA型インフルエンザ(新型インフルエンザ)が関西地区で広がりを見せつつあり、テレビではマスクの売切れが続いているというニュースが流れています。

インフルエンザウイルス自体は生化学的にそれほど強いウイルスでないので、うがい薬でうがいをしたり、手を石鹸で洗うことで簡単に死滅します。インフルエンザウイルスの表面は薄い膜(エンベロープと言います)で覆われており、石鹸などで簡単に壊れます。
マスクについては、インフルエンザにかかっている人が咳やくしゃみをした時にウイルスを含んだ飛沫(エアロゾル)が周囲にまき散らされることを防止するためには有効ですが、空中を漂うウイルスを吸いこまないようにするためには効果が薄いかも知れません。ただし喉を乾燥させないようにすることで、ウイルスに対する抵抗性を上げることにはプラスに働くと思われます。
いずれにしても、インフルエンザウイルスを吸いこんだら、瞬間的に感染するわけではないので、マスクをしていても、してなくても、人ごみを歩いた後はうがいや手洗いがとても大切になります。

😯
またつい最近、大学病院などの医療機関で、A型インフルエンザに有効性と報告されたとの新聞報道を受け、キッズプレイスの薬局でも、漢方薬の麻黄湯がとてもよく売れています。10個ほどあった麻黄湯の錠剤がなんと1日で無くなりました。ほとんどは関西方面からのお客さんからの注文です。想像するに、関西方面ではかなりインフルエンザの流行が不安をかき立てていると思われます。

🙂
数回に渡りブログで紹介してきましたが、麻黄湯はタミフルと同じぐらいインフルエンザの症状を緩和し、発熱時の解熱剤の投与量がタミフルより少なくて済むなどのメリットが報告されています。
また、タミフルの小児への投与には慎重さが求められていますが、抗インフルエンザ薬が登場して数年であることに対し、麻黄湯の歴史は約2000年近くありますから、安全性に関する実績の点では麻黄湯の方が遙かに有利と思われます。

小さいお子さんにとって、インフルエンザは、肺炎だけでなく脳炎(インフルエンザ脳症)を引き起こす大変怖い病気です。これはインフルエンザウイルスの感染に伴って脳炎を発症するもので、1-5歳の乳幼児がインフルエンザ脳症に罹ると、致死率は20-40%と言われています。また運よく助かっても脳に麻痺が残るかも知れません。

😳
インフルエンザ脳症の発症や、解熱剤を使うことにより起こる2次的な障害を減らすためにも、小さいお子さんにとってインフルエンザによる発熱期間を短縮することはとても重要なことです。発熱期間を短縮し、解熱剤の投与回数も減らせるのであれば、麻黄湯はインフルエンザに期待できるお薬と考えられます(少なくとも私はそう考えています)。

一方、キッズプレイスのある福岡でも、新型インフルエンザの流行が拡大すれば、保健所への相談申込みの殺到や、病院も患者さんで溢れることが予想されます。当然、薬局でも麻黄湯が売切れる可能性がありますから、もしもの時に備えて、前もって一瓶ぐらい準備される方が良いかも知れません。
値段は350錠約20日分で3200円弱ぐらいです。参考 なお麻黄湯の錠剤は3?4年保存でき、現在流行しつつある新型インフルエンザで麻黄湯を使う機会がなくても、冬に流行する季節性のインフルエンザにも有効です。

😉
麻黄湯の服用については、とても大事なことが2つあります。
1.麻黄湯にしてもタミフル等の抗インフルエンザ薬にしても、インフルエンザのひき始めの段階(ウイルスが増殖する前)に服用しなければ意味が無く、高熱が出てしまった後では効きません。つまり熱が出てから慌てて薬局で買い求めても手遅れです。

2.現在の新型インフルエンザは季節性のインフルエンザと同じく、弱毒タイプのものですが、インフルエンザウイルスと細菌が同時に感染している場合(混合感染と言います)、特に黄色ブドウ球菌等の場合は症状が重篤化し易くなります。
5月は日中の気温の差が激しい日が多く、寝ている時にお子さんが布団を脱いでしまうことが多いのですが、寝冷えによって少し風邪気味であったり、青鼻をたらして咳をしているような時にインフルエンザウイルスに感染すると重篤化する可能性がありますので、このような場合は(保健所の発熱相談センターに先に相談し)病院に直行されて下さい。

5月は晴天が続いて空気が乾燥しているため、インフルエンザウイルス流行りやすい環境が整っていますが、6月を迎えて湿度が高くなれば徐々に治まって来るものと思われます。しかしながら冬になるとまた同じインフルエンザウイルスの脅威に晒されます。A型インフルエンザウイルスは、遺伝子がとても変異しやすく、人から人に感染している間にも強毒化することも考えられるので、今後も注意が必要と言えます。

一方で、日頃から生活のリズムを整えて、病気に負けない体力作りが必要かも知れません。病気に負けない、インフルエンザになっても乗り越えられる基礎体力をつけることは、これからの子供たちにとって、とても重要なことです。