ハヒフヘホー!「ばい菌」の正体は?

2007年12月26日薬煎院薬局から

 「ばいきんまん」と言えはやなせたかし先生の「アンパンマン」の敵役ですね。子供たちも食事の前に「手に"ばいきんまん”が付いてるから良く石鹸で洗ってね!」というと、元気に「は?い」と返事が返ってきます…。

 さて、ブログをご覧のお父さんお母さん方への質問ですが、ばいきんまんの正体をご存知ですか?(笑)

 アニメの「アンパンマン」では、ばいきんまんは「ばいきん星」から来た天才科学者ということになっています。アンパンマンにやっつけられると、「ばいばいき?ん」と遙かかなたに消えて行ってしまいますが、このセリフが耳にこびり付いているお父さんお母さんも多いのではないかと思います(笑)。
しかし、ふと、お子さんからバイ菌って何?と聞かれると、上手く説明できていないことが多いかも知れませんね。そこで今日は、バイ菌についてのミニ知識を紹介しましょう。

 単に私たちが、「バイ菌」というと、人に悪さをする微生物を指すことが多いようです。しかしこれらは大まかに3つの全く違う生物がごっちゃになっています。それらは、?細菌(さいきん)、?真菌(しんきん)、?ウイルスの3つです。これらは目に見えないという点では同じですが、それぞれ別ものです。

 ?まず「細菌(さいきん)」ですが、悪玉で有名なのは、食中毒の大腸菌O157や虫歯菌のようなものです。一方、同じ細菌でも善玉のものは私たちの生活に欠くことができないものが多く、乳酸菌やビヒズス菌などが有名です。
 一般的に「細菌」は速いスピードで増殖するという特徴を持っています。もし悪玉菌が人間の体の中に入り免疫システムを突破すると、爆発的に増殖し大変危険な状態に陥ります。細菌が増えるのも困りますが、悪玉菌は様々な「毒素」を出すものが多く、早く細菌を除去する必要があります。
 特に、赤ちゃんの飲みかけのミルク(母乳)を保温器で温め続けたり、保管することが危ない理由は、栄養たっぷりのミルクの中では細菌が短時間に爆発的に増殖するためです。赤ちゃんは免疫系が未熟なため、感染症を引き起こすと重篤化する確率が高くなります(あかちゃんが38℃位の熱でも直ちに病院で処置を受ける必要があるのはこのためです)。

 ?次に真菌(しんきん)です。真菌の悪玉は良く知られた「カビ」です。黒カビ、青カビや水虫の原因の白癬菌などが有名です。真菌の善玉は「カビ」とは言わずに「麹(こうじ)」などと呼ばれます。味噌や酒もこの麹なくしては作れません。
 味噌や酒を作るのに時間がかかるように、真菌は細菌ほど短時間に増えることはありません。また胞子によって移動して増えるなどの特徴があります。
 真菌(カビ)は増殖スピードが遅いため、自分より増殖の速い「細菌」に栄養の良い場所を占領されてしまう可能性があります。そこで真菌は「細菌を溶かす物質」を体の外に出してこれを防いでいます、これが「抗生物質」です。例えば青カビは細菌を寄せ付けないように「ペニシリン」を体外に出しています。
 人間はこのカビが作る抗生物質を医療に応用しています。製薬会社は沢山のカビを世界中から集めて来て、その中から有効な抗生物質を見つけようとします。抗生物質はヒトの細胞を溶かさずに細菌の細胞のみを選択的に溶かします。
 少し専門的になりますが、?の細菌と?の真菌の違いは、前者が菌体内に「核」を持っていないのに対し、後者は「核」を持っています。名前が似ていても両者は構造的に異なる生物です。

 ?3つめはウイルスです。これはノロウイルスやインフルエンザウイルス、肝炎ウイルスなどが有名です。ウイルスは自分だけでは増殖できずに、必ず人や動物の細胞内に感染して増えます。ウイルスが厄介なのは、人や動物の細胞から外に出てくるとき、寄生していた細胞を破壊することです。ウイルスが沢山の細胞に感染するということはそれだけ体の細胞が破壊されるということになります。残念ながら抗生物質はウイルスには効きません(ウイルスへの対応については別の記事としてブログに書かせて頂きます)。

 ?細菌、?真菌、?ウイルスは人を含め動物や植物にも感染します。単独で感染することもあれば同時に感染することもあります(複合感染)。インフルエンザウイルスによる風邪の時にお医者さんが抗生物質を出されるのは、細菌による2次感染を防止するためです。特に小さなお子さんがインフルエンザウイルスに感染していて体力を消耗している時に2次感染の確率が高まりますので、お医者さんの指示に従って飲ませるようにしてください。ただし、抗生物質の乱用は「耐性菌」という厄介な細菌を作り出してしまう結果になるので、リスクを考えて使用する必要があります。最近では抗生物質が全く効かないスーパー結核菌(耐性菌)が出現して大きな問題になっています。

 細菌、真菌、ウイルスを完全に死滅させるには「オートクレーブ」という装置を使って高温高圧で滅菌します。オートクレーブとは、ご家庭にある圧力釜の医療向けの機械と思ってもらうと分かりやすいと思います。そこまでしなくても、一般家庭では煮沸したり、石鹸で洗うことによりある程度の確率で除去することができます。

 今回は細菌、真菌、ウイルスについての説明でした。これからまだまだ風邪の季節が続きますが、お子さんの病気への対処の一助となればと思います。次回はインフルエンザウイルスに有効な薬についてブログを書きたいと思います。

2007年12月26日薬煎院薬局から

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