フラッシュカードの効能と副作用
キッズプレイスではフラッシュカードによる右脳開発を行っています。ひらがな、カタカナ、ドッツ、数字、アルファベット、色、野菜、動物、国旗、音符…、「へぇ、こんなカードもあるのか…」と言うほど、いろいろな種類のカードがあります。
キッズプレイスに通っている2歳半の私の娘も、6ヶ月頃から毎日10分程度のフラッシュカードを年上のお子さんと一緒に行ってきました。最近では非常に言葉を覚えて、ひらがなの文章を結構スラスラと読めるようになりました(読めると言っても意味はあまり分っていないようです)。最近ではカタカナに夢中で、途中で「わかんな?い」と叫びながら、身の回りのカタカナを見つけては、一生懸命一人で解読しようと格闘しています。またテレビのニュースを見ていると「いまアメリカと言ったよ」、「イギリスて書いてあるよ」などと、いちいちニュースの内容に反応しています。 大人の見るニュースに見入っている姿は何となくおかしな感じです。
そんな娘の姿を見ていて親としては嬉しく思いますが、時にはちょっと出来過ぎているようで怖くなります(そう感じるのは親だけかもしれませんが…)。
一般的に言われているフラッシュカード(正統なフラッシュカード)では、1枚のカードを0.5秒ほどのかなり早いスピードで様々な絵の描かれたカードを次々と子供達に見せます(同時にカードの名前も言います)。初めてフラッシュカードを見た人には「猛烈なスピード」といった方がよいかも知れません。しかしキッズプレイスで行われているフラッシュカードはそこまで早くなく、どちらかといえばスロー・フラッシュといった感じです。
フラッシュカードの狙いとは、短いタイミングで次から次へとカードを見せることで、子供達がカードの絵の意味を理解しようとする前に右脳を刺激しようというものです。つまり意図的に高速でカードを次々と提示することにより、意味や筋道など(論理性)を司る左脳が反応するタイミングを与えず、感覚的な働きをつかさどる右脳により優先して働きかけ鍛えようというものです。
しかしながら、正統なフラッシュを行う場合、先生の方も精神を集中しないと、手際良く次々に一定のタイミングでカードをめくっていくことが出来ません。このためフラッシュカードを行うためにはちょっとした熟練が必要です。傍から見ると、沢山のカードを一気にめくっている先生の様子は、まるでロボットのようで、無機質にも見えてちょっと怖いです。
真剣にフラッシュに取り組めば取り組むほど、教える側の先生も、習う方の園児さんも、フラッシュ中に喜怒哀楽などの感情が入りこむ余地が少なくなります。また子供たちにとっては受身の授業となり、その結果として無感動な子どもたちを生み出す原因になるのではないかという「弊害」が心配されています。このため最近ではフラッシュカードを敬遠される父兄の方もおられます。
幼い子供達が興味を持った物の名前や特徴を覚えるスピードは驚異的ですね。砂地に水をまくようにいろいろなことを覚えて行きます。
様々なカードを繰り返して使うフラッシュカードでは、右脳を鍛えるとともに記憶力も高めることができます。特殊な道具を必要とせず、多くの労力も必要ありません。子どもたちにも苦痛を強いることなく一石二鳥の効果が期待できます。これがフラッシュカードの効用です。しかし授業内容があまりにも受け身で機械的になり過ぎ、無感情な心を生み出してしまっては意味がありません。この点でフラッシュカードは「薬剤」と同じで、期待される効果がある反面、やり方を誤ると副作用があると言えそうです。
フラッシュカードの副作用は、小学生以上の子供たちが(最近は大人でも)電子ゲームに熱中しすぎて無感動になる現象と似ていような気がします。ゲームも度を過ぎなければ、脳トレやストレス解消の良いツールとなりますが、のめり込むと対人関係を絶って現実世界とバーチャル世界の区別がつかなくなるとも言われます。
ではどうすればフラッシュカードの副作用を抑えることが出来るでしょうか、これについては専門家の先生の研究成果が待たれるところです。しかしながら改良法が考え出されたとしても、その効果を検証するためには多くの実地データが必要であり、まだまだ時間がかかると思われます。
結論を待っていては子供達も大人になってしまいますので、インスタントに答えを出すとすれば、現時点ではゲームと同じで「やり過ぎない」と言うことに尽きるのではないでしょうか…。フラッシュカードを行うなら1日5?10分程度、軽めに毎日行う方が良いのかも知れません。また、フラッシュした物と同じ題材が書かれた絵本などで授業の内容をフォローすると子供たちの好奇心が強く刺激されるようです。
キッズプレイスの子どもたちもフラッシュカードで様々なことを覚えていますが、楽しみながら覚え、覚えた知識が生かされることが大切なような気がします。つまりフラッシュカードは皆で楽しく勉強する道具の1つに過ぎず、覚えたものが日常の中で出てくると子どもたちの目が輝きます。
フラッシュカードの効用を上手く享受しつつ、子供たちの好奇心を養うことが出来れば、フラッシュカードを卒業した後も子供たちは色々なものに興味をもって自ら進んで知ろう(学ぼう)とすると思います。
フラッシュカードは、副作用を気にしすぎて使わないより、その利点を最大限に引き出すやり方を工夫し、鍛えられた右脳と記憶力を次のステップにつなげるフォローが大切なのかもしれません。