今年のインフルエンザ…

2009年1月16日薬煎院薬局から

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以前、キッズプレイスのブログで麻黄湯(まおうとう)や葛根湯(かっこんとう)などの漢方薬が抗インフルエンザ薬のタミフルと同程度の効果を示した例(日本東洋医学会学術総会報告例)を紹介いたしましたが、強い寒気団が日本に近づいて来るに従って、インフルエンザが流行りはじめ、ブログ記事のアクセス数も上がっています。

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今日は、最近の世界保健機関(WHO)の発表情報に基づいて、インフルエンザについて少々解説したいと思います(私はむかし薬の開発研究をしていましたが、いまでは福岡の漢方薬局の一薬剤師にすぎませんので、より正確な情報や治療に関する情報については専門のお医者様にご相談ください)。ここではキッズプレイスのブログとして、子育ての中で必要な最低限の知識を書かせて頂きます。

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私にも今年の春に2歳になる、最近「いやっ」を連発するおてんば娘がいますが、インフルエンザに関しては関心事が2つあります。

1つは、新型インフルエンザといわれるものです。もう1つは、今流行り始めているインフルエンザが、抗インフルエンザ薬の効かない耐性型であることです。

最近テレビなどでも頻繁に報道されているので皆さんも「新型インフルエンザ」についてはお聞きになったことがあると思いますが、ここでは新型インフルエンザを知る前に、新型ではないインフルエンザの話を先にします。冗長な言い回しですが、インフルエンザに関する一般的な諸注意です。
 大人であれば、インフルエンザに罹ると高熱が出て3~4日寝込んで安静にしていれば自然に回復して元気になります。しかし子供となると「インフルエンザ脳症」などのかなり重篤な合併症を引き起こす確率が高く(特に1~5才)、慎重な対応が必要となります。
 これらの合併症にかかると致死率が高く、たとえ助かっても脳に障害が残ることもあり(脳性まひなど)、元気なお子さんの姿を二度と見れなくなる可能性もあります。このようなインフルエンザ脳症の発症が小児において日本では年間100~200例あるそうです。
 残念ながらインフルエンザワクチンの接種がインフルエンザ脳症に有効であるとの結果は得られておらず(統計学的有意差が得られておらず現在検証が継続中)、ワクチンを接種したからと言って安心しないでください。
 また以前にもブログに書かせて頂きましたが、子供が急に高熱を出した時、慌てて大人用の解熱剤を子供に飲ませるようなことをすると思わぬ副作用を引き起こしますから、決して素人判断をしないことが大変重要です(職業柄、繰り返し警告させて頂きます)。子供には子供用の薬のみを与えることが子育ての大原則です。

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 これに対し新型インフルエンザとは、端的に言えば新しくて強力なインフルエンザウイルスを言いますが、中でも本来「鳥」の間でしか感染しなかったウイルスが人間にも感染するようになった、「高病原性鳥インフルエンザ(A/H5N1型)」がその代名詞となっています。このA/H5N1型について、2009年1月7日のWHOの発表では、全世界の患者の累計数が393名に達し、致死率も累計で63%、2008年のみを見れば74%と発表されています。
 これはどういうことかというと、感染したら4人中3人が死に到る可能性があるインフルエンザウイルス(A/H5N1型)が既に世の中に存在していることを意味します。もし4人家族の誰かが感染すれば、生き残るのは1人だけという計算になります。特に幼い子供やお年寄りは体力的にも弱いので感染は致命的です。想像するだけでもぞっとするような怖いことが、すぐそこまで来ています。そして、いつ感染爆発(パンデミックと言います)を起こしてもおかしくありません。

 インフルエンザウイルスは大きく3つのタイプに分かれ、それぞれA型、B型、C型と呼ばれています。この中でA型は遺伝子の変異を起こしやすく、C型はほとんど遺伝子が変異しません。B型はその中間です。ウイルスの遺伝子が変化すると、当然ながらウイルスが作り出すタンパク質の性質が変化します。つまりA型インフルエンザウイルスはコロコロとウイルス自体の性質が変化することを意味しています(人でいえば毎年、顔や体の体型、体質がコロコロ変わるようなものです)。A型は細かい性質までコロコロと変化するので、同じA型でもAソ連型、A香港型などと呼んで区別されていますが、それでも細かく変異するため同じAソ連型といっても全く同じとは限りません(後述のA型の耐性ウイルスはその例です)。

C型は遺伝子が変化しにくいので一度感染すると人間でも免疫が出来上がります(A型ほど脅威にはなりません)。B型でも遺伝子がそれほど変化しないので、一度感染すると免疫がある程度長続きします。これに対しA型は大変変化しやすいので、体の免疫が次の年には役に立たないという事態が起きます。A型についてはワクチンが効きにくい(正確にいえばワクチン製造の予測を立てにくい)のはこのためです。

病原微生物検出情報(国立感染症研究所)によると、2008年12月現在、北海道、近畿地方および鳥取や広島県などの中国地方で患者数の増加が報告されていますが、ウイルスとしてはAソ連型、A香港型、B型が検出されています。このことから、今年のインフルエンザはこれらの混合流行が懸念され、医療関係者はそれぞれの型の患者数の動きに注目しています。特に小さなお子さんはC型を含めて免疫を獲得していないことが多く、まれに複数のインフルエンザウイルス(Aソ連型、A香港型、B型、C型)が混じって感染することもあり得ますので、流行の本番を迎えて注意が必要です。

 A型は変異が早いため、人類にとって脅威的なウイルスと言えますが、A型インフルエンザウイルスの変異しやすさは、とうとう抗インフルエンザ薬に耐性の性質を生み出してしまったようです。抗インフルエンザ薬(商品名タミフル)が効かないAソ連型のウイルス、「Aソ連型(オセルタミビル)耐性ウイルス」という新手の亜種が日本でも既に出現しています(A型は変異しやすいため、いつかはこのようなことが起きると思っていましたが、意外に早かったような気がします)。
 WHOの2008年12月29日時点の発表では、耐性ウイルスは、日本で調べられた14例の検体のうち、なんと13例で検出されており(検出率93%)、国内では鳥取県で多く検出されています。今後、耐性ウイルスの国内での流行が心配されます(耐性ウイルスについては、抗インフルエンザ薬はタミフルだけではないので、処方はお医者さんにお任せ下さい)。一度耐性型が出現すると、新しい抗インフルエンザ薬(新薬)が開発されるまで耐性ウイルスが蔓延ることになり、これは厄介な問題です。

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 インフルエンザの予防はワクチン等がありますが、ワクチンによる免疫ができるまでには時間がかかる為、いまからでは残念ながら遅すぎます。
 インフルエンザウイルスは寒さと乾燥を好みますが、手洗いや日光で容易に不活化される(それほど頑丈なウイルスではない)ため、手軽にできる一番の予防法は、外から帰ったら石鹸で手を洗い、必ず「うがい」をすることです。また部屋にいるときは湿度を上げることが大切です。マスクの着用はウイルスを遮断するだけでなく、ウイルスの感染経路である喉や鼻の粘膜を乾燥から守ってくれるので有効です。
 もし周囲にインフルエンザに罹った人がいて、その人が咳をしたとしても、ウイルスがすぐに自分の体内に感染することはありません。ウイルス粒子が体内に入り込むまでにはラグタイムがあり約20分かかります。ですから、外出後の手洗いやうがいを、あきらめないでスグに行うようにして下さい。またウイルス粒子が1個でも付着したら感染するのではなく、ある程度まとまった量の付着が必要ですから、体に付着したウイルス粒子の数を減らすことも有効です。
 そして、もしインフルエンザが流行したら、外出そのものを極力避けるべきです(新型インフルエンザの場合は国や自治体から外出禁止令が発令されるかも知れません)。特に小さなお子さんがいるご家庭ではお父さんお母さんが仕事優先で無理をされないことです。仕事先からAソ連型、A香港型、B型、C型と、いろいろなウイルスを持って帰って来ることに繋がるためです。

 キッズプレイスでもインフルエンザが疑われる園児さんがおられたら、先生方を通じて保護者の皆さんに注意を促していきたいと思います。また今年も先生方には麻黄湯などのお薬を処方していきたいと思います。

 長い記事となりましたが、子育ての役に立てばと思い、インフルエンザについてコメントさせて頂きました。園児さんの今冬の健康の助けになれば幸いです。

参考リンク
国立感染症研究所 感染症情報センター

2009年1月16日薬煎院薬局から

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