キッズプレイスでは生後5ヶ月の赤ちゃんをお預かりしています。この月齢になると、赤ちゃんはよく指しゃぶりをします。替えたばかりの「よだれかけ」も直ぐにぐっちょりです。また、このころから知能の急速な発達が見られ、同時に何でもかんでも口に運んでしまします。
時々お母さんが、赤ちゃんの指しゃぶりを見て「きたない」と心配されることがあります。しかし、これはあまり気にする必要はありません。むしろ、赤ちゃんにとって指しゃぶりは、アレルギーに負けない強い体を作るために、とても大切なことと言えるかも知れません。
赤ちゃんに限らず3?4才ころの子供たちが汚そうなものを口に入れていても、特に不潔であったり危ないものでなければ、保護者の方はあまり神経質に止めないであげてほしいと思います。もしこれを無理にやめさせると、将来的に子供たちの体がアレルギー体質となる可能性が高まる危険性があります。
私たちの体の中には、免疫を担う「Tリンパ球」という細胞があります。このTリンパ球には、体の外から入って来たバイ菌やウイルスを攻撃する「T1」と、アレルギーに関係する「T2」があります。この2つのTリンパ球の割合が、正常に保たれているとよいのですが、T1に比べてT2の割合が多くなるとアレルギー体質に傾きます。
T1とT2は、どちらかが増えるとどちらかが減る関係にあり、互いの存在割合は生後3?4才ころまでに決定されてしまい、一度決定されると、成長してもその割合は変わらないと言われています。このことは、アレルギーが治りにくい原因の1つと考えられています。
3?5才ころまでに清潔すぎる環境で育てられた子供の体は、自然とT1の出番が少なくなってT2が増え過ぎ、潜在的なアレルギー体質になります。このような体質の子供が、アレルギー物質(とアレルギーを助長する物質)に出会うとアレルギーを発症することになります。
冒頭に紹介した赤ちゃんの指しゃぶりですが、赤ちゃんは病気を発症しない程度の、ごく微量のバイ菌やウィルスを指しゃぶりをすることによって体に取り入れ、地道にT1の割合を増やし、アレルギーにならないようにT1とT2の割合を正常に保とうとしているとも考えられます。
人間の住む環境は、この半世紀で驚くほど衛生的になりましたが、人間の体の免疫システムは、私たちが野山で暮らしていた石器時代のころのままで、ほとんど変化していません。生物の進化には数千年から数万年単位の時間がかかるといわれていますが、(端的にいえば)現代人の体は未だ3000年以上前の非衛生的な環境に対応したままであり、近年50年間で劇的に整備された衛生的な環境に順応する進化を遂げきってはいないといえます。
あまりにも生活環境がきれいになり過ぎたために、人はアレルギーと言う、思いもよらぬ副作用に悩むことになったのかも知れません(この辺の詳しい話をお知りになりたい方は、東京医科歯科大学名誉教授の藤田紘一郎(ふじたこういちろう)先生の著書が刺激的でもあり、また分かりやすいかも知れません)。
最後に、誤解の無いように、
ここでは、子供たちが汚いものを触ったり、口に入れようとすることを止めないよう勧めているいるのではありません。子供たちが危険なものや本当に汚いものを触ったり口に入れようとした時は、?周囲の大人がちゃんと注意してあげるべきです。しかし「ちょっと汚いかな?」と思うレベルでは、特に口出しせずに、そっと見守ってあげる気持ちが大切だと思うのです。それは子供たちの心の成長のためでもあり、バイ菌やウイルスに負けない、アレルギーにならない丈夫な体を作るためにも必要だと思うのです。
そして、もし、お子様がアレルギーになったり、アレルギー体質(アトピーや喘息等)であれば、T1の割合を増やすように、生活や食事をコントロールする必要があります。しかし、だからと言ってバイ菌やウイルスを口にするのは大間違いです。専門のお医者様や薬剤師にご相談下さい。