新型インフルエンザと麻黄湯

2009年5月20日薬煎院薬局から

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今年の初めに季節性のインフルエンザについてブログの記事を書きましたが、5月に同じような記事を書くとは思っておりませんでした。この記事を書き始めた時点では、ブタ由来のA型インフルエンザ(新型インフルエンザ)が関西地区で広がりを見せつつあり、テレビではマスクの売切れが続いているというニュースが流れています。

インフルエンザウイルス自体は生化学的にそれほど強いウイルスでないので、うがい薬でうがいをしたり、手を石鹸で洗うことで簡単に死滅します。インフルエンザウイルスの表面は薄い膜(エンベロープと言います)で覆われており、石鹸などで簡単に壊れます。
マスクについては、インフルエンザにかかっている人が咳やくしゃみをした時にウイルスを含んだ飛沫(エアロゾル)が周囲にまき散らされることを防止するためには有効ですが、空中を漂うウイルスを吸いこまないようにするためには効果が薄いかも知れません。ただし喉を乾燥させないようにすることで、ウイルスに対する抵抗性を上げることにはプラスに働くと思われます。
いずれにしても、インフルエンザウイルスを吸いこんだら、瞬間的に感染するわけではないので、マスクをしていても、してなくても、人ごみを歩いた後はうがいや手洗いがとても大切になります。

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またつい最近、大学病院などの医療機関で、A型インフルエンザに有効性と報告されたとの新聞報道を受け、キッズプレイスの薬局でも、漢方薬の麻黄湯がとてもよく売れています。10個ほどあった麻黄湯の錠剤がなんと1日で無くなりました。ほとんどは関西方面からのお客さんからの注文です。想像するに、関西方面ではかなりインフルエンザの流行が不安をかき立てていると思われます。

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数回に渡りブログで紹介してきましたが、麻黄湯はタミフルと同じぐらいインフルエンザの症状を緩和し、発熱時の解熱剤の投与量がタミフルより少なくて済むなどのメリットが報告されています。
また、タミフルの小児への投与には慎重さが求められていますが、抗インフルエンザ薬が登場して数年であることに対し、麻黄湯の歴史は約2000年近くありますから、安全性に関する実績の点では麻黄湯の方が遙かに有利と思われます。

小さいお子さんにとって、インフルエンザは、肺炎だけでなく脳炎(インフルエンザ脳症)を引き起こす大変怖い病気です。これはインフルエンザウイルスの感染に伴って脳炎を発症するもので、1-5歳の乳幼児がインフルエンザ脳症に罹ると、致死率は20-40%と言われています。また運よく助かっても脳に麻痺が残るかも知れません。

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インフルエンザ脳症の発症や、解熱剤を使うことにより起こる2次的な障害を減らすためにも、小さいお子さんにとってインフルエンザによる発熱期間を短縮することはとても重要なことです。発熱期間を短縮し、解熱剤の投与回数も減らせるのであれば、麻黄湯はインフルエンザに期待できるお薬と考えられます(少なくとも私はそう考えています)。

一方、キッズプレイスのある福岡でも、新型インフルエンザの流行が拡大すれば、保健所への相談申込みの殺到や、病院も患者さんで溢れることが予想されます。当然、薬局でも麻黄湯が売切れる可能性がありますから、もしもの時に備えて、前もって一瓶ぐらい準備される方が良いかも知れません。
値段は350錠約20日分で3200円弱ぐらいです。参考 なお麻黄湯の錠剤は3?4年保存でき、現在流行しつつある新型インフルエンザで麻黄湯を使う機会がなくても、冬に流行する季節性のインフルエンザにも有効です。

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麻黄湯の服用については、とても大事なことが2つあります。
1.麻黄湯にしてもタミフル等の抗インフルエンザ薬にしても、インフルエンザのひき始めの段階(ウイルスが増殖する前)に服用しなければ意味が無く、高熱が出てしまった後では効きません。つまり熱が出てから慌てて薬局で買い求めても手遅れです。

2.現在の新型インフルエンザは季節性のインフルエンザと同じく、弱毒タイプのものですが、インフルエンザウイルスと細菌が同時に感染している場合(混合感染と言います)、特に黄色ブドウ球菌等の場合は症状が重篤化し易くなります。
5月は日中の気温の差が激しい日が多く、寝ている時にお子さんが布団を脱いでしまうことが多いのですが、寝冷えによって少し風邪気味であったり、青鼻をたらして咳をしているような時にインフルエンザウイルスに感染すると重篤化する可能性がありますので、このような場合は(保健所の発熱相談センターに先に相談し)病院に直行されて下さい。

5月は晴天が続いて空気が乾燥しているため、インフルエンザウイルス流行りやすい環境が整っていますが、6月を迎えて湿度が高くなれば徐々に治まって来るものと思われます。しかしながら冬になるとまた同じインフルエンザウイルスの脅威に晒されます。A型インフルエンザウイルスは、遺伝子がとても変異しやすく、人から人に感染している間にも強毒化することも考えられるので、今後も注意が必要と言えます。

一方で、日頃から生活のリズムを整えて、病気に負けない体力作りが必要かも知れません。病気に負けない、インフルエンザになっても乗り越えられる基礎体力をつけることは、これからの子供たちにとって、とても重要なことです。

2009年5月20日薬煎院薬局から

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