インフルエンザになったら…
毎年1月から3月までがインフルエンザのシーズンとなります。私にも9ヶ月の子供がいますが、これから春にかけて心配な季節が続きます。そこで今回は「子供たちがインフルエンザになったら…」ということについて考えてみたいと思います。
これまでテレビで散々タミフルの子供に対する異常行動が報告されてきたため、お医者さんも子を持つお父さんお母さんもタミフルの使用については嫌がられる方が多いのではないでしょうか。実際、医者さんでさえもタミフルの処方を控える方が増えているそうです。
そもそもタミフルとは、スイスの製薬会社のロッシュ社が開発した抗インフルエンザ剤です。H5N1と言われる致死率が高いA型インフルエンザ(俗に言う鳥インフルエンザと言われるもので、いずれ人に感染するように変異すると考えられています)に有効な薬として、世界各国で備蓄が進められています。
しかしこのタミフルの原料が漢方薬に使われる『八角(はっかく)』(別名、大茴香[だいういきょう]、八角茴香とも呼ばれます)と言う生薬から抽出された「シキミ酸」から作られていることを知る人は少ないと思います。八角は中華料理などにも使われ、独特の芳香を持ち、健胃作用や喉の痛みを和らげる作用を持っています。
タミフルが生薬成分から作られていたことを聞いて驚かれる方も多いと思いますが、実はこんな話もあります。
最近の研究では、タミフル以上に漢方薬の方がインフルエンザに有効であるとの比較結果が報告され、医学会で注目されています。自衛隊仙台病院の小児科の窪智宏先生が2005年日本東洋医学会学術総会で発表された研究成果によると、A型インフルエンザにかかった5カ月?13歳の子供60人で比較を行ったところ、タミフルより漢方薬の「麻黄湯(まおうとう)」の方が2倍近く短い時間で治療でき、副作用などは見られなかったそうです。
また大人についても、別の医療機関で検証され、やはりタミフルより麻黄湯の方が早く治ったとの結果が報告されています。
麻黄湯とは葛根湯(かっこんとう)などと同じように、2000年前から感染症の初期段階に使われてきたポピュラーな漢方薬ですが、これらの漢方薬の中に含まれる生薬の「麻黄」には、A型インフルエンザウイルスに対する増殖抑制効果が実験的に認められています(学術文献;Mantani, et al: Antivir Res: 44(3); 193-200, 1999)。
少し話が難しくなりましたが、インフルエンザが流行しだして、お子さんの様子が少し変だなと思ったら、有効な漢方薬があることをちょっと思い出してみてください。子供にタミフルが使えないので、最近の小児科病院では「麻黄湯」を処方箋で出すお医者さんが多いです。ただし小児科の先生が上記の学会報告の内容や、漢方薬に対して懐疑的な意見を持たれている場合は、残念ながら処方してもらえないかも知れません…。
麻黄湯や葛根湯は安全性が高く、風邪(インフルエンザ)の「ひき初め」に飲むと効果的です。ちなみに葛根湯は「しょうが湯」と同じ葛と生姜が入っており、体を温める効果があります。女性やお子さんなどの普通の体力の方で、寒気がして筋肉や節々が痛む時(コリを感じるような場合)や咳が出ていない風邪のひき初めに向いています。麻黄湯はどちらかと言えば胃腸が強く体力があり、咳などを伴う風邪のひき初めに用います。葛根湯にしても麻黄湯にしても体内で風邪のウィルスが増殖し始める前に飲むととても効果があります。
なお麻黄湯は風邪の症状が進んで汗が沢山でているような場合に服用すると余計に体力を奪ってしまうため、風邪の中期から後期には用いません。また、出来れば錠剤や粉末タイプのものでなく「液体」の方が効果的であり、体への吸収も良いです。さらにドラッグストア等で売っている製薬メーカー製の箱入りの量産品ではなく、本物の煎じ薬の方が格段に効果的です。これらの漢方薬は予防にも有効です。
煎じ薬の場合は、お子さんが3か月以上であれば麻黄湯や葛根湯を服用することができます(3ヶ月未満は服用できません。但し漢方薬の文献(類聚方廣義)には乳児にも効果的であることが記載されています)。また眠くなることも胃を荒すことも無く、むしろ頭をスッキリさせます。しかし完全に風邪をひいてしまった後では効果がありません。この段階では使う漢方薬は別の処方になります(ウイルスが増殖してしまった後では効果薄ということです)。
参考までに、インフルエンザではありませんがノロウイルスに感染した時の私の経験談を書いておきます。
今年の冬、福岡でもノロウイルスによる嘔吐下痢症が流行りましたが、不覚にも私も感染してしまいました。典型的なノロウイルスの症状で、突然の腹痛から始まり徐々に下痢が始まりました。その日の晩はひどい悪寒に悩まされ、大布団をかぶっても体がガタガタ震えるほどでした。風邪の時のためにと思って準備(備蓄)しておいた葛根湯(煎じ薬)が自宅にあったので、それを飲みました。15分ほどしてから体が熱くなり始め、その後は大布団を脱ぐほど体がポカポカになり悪寒や頭痛も無くなり吐気は治まりました。しかし残念ながら下痢は翌日まで完全には止まりませんでした。葛根湯のおかけで結果的にひどい悪寒、腹痛や頭痛が消えたので気分的にはとても楽でした。私の場合、しかたなく身近にあった葛根湯を服用しましたが、回復も早かったので自分自身でも驚いています。なお調べてみると葛根湯は下痢症状がある時にも有効です(傷寒雑病論)。
最後に、ちょっとPRですが、漢方薬(煎じ薬)は2000年前の昔から老若男女を問わず用いられてきました。昨今は、医薬品を含め石油由来製品が身近に溢れていますが、天然の草根木皮を原料とする漢方薬だからこそ、小さな子供たちにもお勧めといえます。キッズプレイスの薬局である薬煎院薬局でも麻黄湯や葛根湯を扱っています。これからが風邪の本格的なシーズンですが、ブログをご覧の皆さんのお子さんが風邪に負けることなく、元気で冬を乗り越えら得ることを願っております。