タバコについて…

2007年11月27日薬煎院薬局から

 私はキッズプレイスの薬局で薬剤師をしています。時々、小笹長丘保育園にお邪魔して、園児さんたちの様子を見ています。園では、保育士の先生方や園児さんから「漢方先生」と呼ばれています。自分ではこの呼ばれ方が気に入っています(笑)。さて、このブログをご覧のお父さんお母さん方の中にも、タバコを吸われている方がおられるのではないかと思います。今日は、専門的な立場からタバコのことについてちょっとだけ書き込みします。

 テレビの情報番組などでも時々取り上げられていると思いますが、小さなお子さんがいる家庭では、お父さん(お母さん)がタバコを吸うと、子供さんが副流煙を吸うことになり、当然ながら健康にはよくありません。妊娠しているお母さんがタバコを吸ったり、副流煙を吸うとお腹の赤ちゃんが流産したり、難産になる確率が高くなることもよく知られていることです。たとえ赤ちゃんが生まれたとしても、突然死症候群や奇形といった問題もつきまとう可能性がたかくなります。タバコの副流煙ですが、1000種類近くの化学物質が含まれ、分かっているだけでも40種類の発がん性物質が確認されています。

 タバコを吸われる方は、たばこの害が分かっていてもなかなか止められないようですね。私はタバコをすいませんが、それだけタバコが美味しく感じるのだろうと思います。また、タバコを吸われる方の多くはお酒も好きな方が多いようです。そんな愛煙家の人に質問すると、お酒を飲みながらタバコを吸うと、とてもタバコが美味しいと言う答えが返ってきます。しかしこの行為が命取りとなります。

 タバコを吸いながらお酒を飲むとガンになる確率が劇的に高まることが分かっています。アメリカの医学誌だったと思いますが、数年前にタバコを吸う人と吸わない人、またお酒好きの人とお酒を飲まない人のそれぞれの人たちについて学術的な調査が行われ、結果が報告されました。それによると、タバコに加えてお酒好きの人の組合せが最もガン(咽頭ガン、食道ガン、胃ガンなど)の発生率が高いことが分かりました。詳しいデータをはっきりとは覚えていないのですが、確率的に両方たしなむ人は、お酒も飲まず煙草も吸わない人い比べ20?50倍程度、また同じタバコを吸っていても、お酒を飲まない人に比べて、4?10倍程度、ガンになる確率が高くなっていたと思います。この調査データを端的な言葉で言い換えると、酒好きの愛煙家は、いずれほぼ間違いなくガンを発症するということを示しています。

 タバコとお酒でガンになる確率が飛躍的に高まるメカニズムは次のように考えられています。タバコに含まれる化学物質は発ガン物質を含めてアルコールに溶けやすい性質を持っています。タバコを吸うと口の中にタバコの化学物質が残りますが、お酒を飲むとにより、これらの成分が毎回きれいに洗浄されて胃へと流し込まれることになります。一方、アルコールは、喉や食道の壁を傷つけ、胃の粘膜を洗い流す性質を持っています。それゆえ、タバコを吸ってお酒を飲むと、喉や食道の壁が傷つけられると共に、胃壁は粘液を洗い流され、発ガン性物質に直接さらされることになります。

 会社などでストレスを感じている人は小さな胃潰瘍を持つ人が多いので、そのような人がタバコを吸いながらお酒を飲むのはとても危険といえるでしょう。
 上記では咽頭ガン、食道ガン、胃ガンにしか触れていませんが、肺がん等の危険性も別にあることを忘れてはいけません。ちなみに、1個の細胞がガン化して1センチ角の大きさに成長するまでには10?30年ほどかかりますが、1センチ角のガン組織がソフトボール大の大きさになるのはあっという間(3年くらい)です。この大きさになる頃には、ガン細胞が体中に転移して手遅れなことが多いです。タバコ好きで、お酒好きの人ほど定期的な健康診断が欠かせないと思いますが、なによりもタバコを止められることをお勧めします。

 愛煙家の人が、生きてお孫さんの顔を見るためには、ほんの少しの勇気が必要なのだろうと思います。

2007年11月27日薬煎院薬局から

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