2007年12月27日薬煎院薬局から

毎年1月から3月までがインフルエンザのシーズンとなります。私にも9ヶ月の子供がいますが、これから春にかけて心配な季節が続きます。そこで今回は「子供たちがインフルエンザになったら…」ということについて考えてみたいと思います。

これまでテレビで散々タミフルの子供に対する異常行動が報告されてきたため、お医者さんも子を持つお父さんお母さんもタミフルの使用については嫌がられる方が多いのではないでしょうか。実際、医者さんでさえもタミフルの処方を控える方が増えているそうです。

そもそもタミフルとは、スイスの製薬会社のロッシュ社が開発した抗インフルエンザ剤です。H5N1と言われる致死率が高いA型インフルエンザ(俗に言う鳥インフルエンザと言われるもので、いずれ人に感染するように変異すると考えられています)に有効な薬として、世界各国で備蓄が進められています。

しかしこのタミフルの原料が漢方薬に使われる『八角(はっかく)』(別名、大茴香[だいういきょう]、八角茴香とも呼ばれます)と言う生薬から抽出された「シキミ酸」から作られていることを知る人は少ないと思います。八角は中華料理などにも使われ、独特の芳香を持ち、健胃作用や喉の痛みを和らげる作用を持っています。Image_of_StarAnis八角、画像出典:Wikipedia

タミフルが生薬成分から作られていたことを聞いて驚かれる方も多いと思いますが、実はこんな話もあります。
最近の研究では、タミフル以上に漢方薬の方がインフルエンザに有効であるとの比較結果が報告され、医学会で注目されています。自衛隊仙台病院の小児科の窪智宏先生が2005年日本東洋医学会学術総会で発表された研究成果によると、A型インフルエンザにかかった5カ月?13歳の子供60人で比較を行ったところ、タミフルより漢方薬の「麻黄湯(まおうとう)」の方が2倍近く短い時間で治療でき、副作用などは見られなかったそうです。

また大人についても、別の医療機関で検証され、やはりタミフルより麻黄湯の方が早く治ったとの結果が報告されています。
麻黄湯とは葛根湯(かっこんとう)などと同じように、2000年前から感染症の初期段階に使われてきたポピュラーな漢方薬ですが、これらの漢方薬の中に含まれる生薬の「麻黄」には、A型インフルエンザウイルスに対する増殖抑制効果が実験的に認められています(学術文献;Mantani, et al: Antivir Res: 44(3); 193-200, 1999)。
Image_of_Maou麻黄、画像出典:薬煎院薬局

少し話が難しくなりましたが、インフルエンザが流行しだして、お子さんの様子が少し変だなと思ったら、有効な漢方薬があることをちょっと思い出してみてください。子供にタミフルが使えないので、最近の小児科病院では「麻黄湯」を処方箋で出すお医者さんが多いです。ただし小児科の先生が上記の学会報告の内容や、漢方薬に対して懐疑的な意見を持たれている場合は、残念ながら処方してもらえないかも知れません…。

麻黄湯や葛根湯は安全性が高く、風邪(インフルエンザ)の「ひき初め」に飲むと効果的です。ちなみに葛根湯は「しょうが湯」と同じ葛と生姜が入っており、体を温める効果があります。女性やお子さんなどの普通の体力の方で、寒気がして筋肉や節々が痛む時(コリを感じるような場合)や咳が出ていない風邪のひき初めに向いています。麻黄湯はどちらかと言えば胃腸が強く体力があり、咳などを伴う風邪のひき初めに用います。葛根湯にしても麻黄湯にしても体内で風邪のウィルスが増殖し始める前に飲むととても効果があります。
なお麻黄湯は風邪の症状が進んで汗が沢山でているような場合に服用すると余計に体力を奪ってしまうため、風邪の中期から後期には用いません。また、出来れば錠剤や粉末タイプのものでなく「液体」の方が効果的であり、体への吸収も良いです。さらにドラッグストア等で売っている製薬メーカー製の箱入りの量産品ではなく、本物の煎じ薬の方が格段に効果的です。これらの漢方薬は予防にも有効です。

煎じ薬の場合は、お子さんが3か月以上であれば麻黄湯や葛根湯を服用することができます(3ヶ月未満は服用できません。但し漢方薬の文献(類聚方廣義)には乳児にも効果的であることが記載されています)。また眠くなることも胃を荒すことも無く、むしろ頭をスッキリさせます。しかし完全に風邪をひいてしまった後では効果がありません。この段階では使う漢方薬は別の処方になります(ウイルスが増殖してしまった後では効果薄ということです)。

参考までに、インフルエンザではありませんがノロウイルスに感染した時の私の経験談を書いておきます。
今年の冬、福岡でもノロウイルスによる嘔吐下痢症が流行りましたが、不覚にも私も感染してしまいました。典型的なノロウイルスの症状で、突然の腹痛から始まり徐々に下痢が始まりました。その日の晩はひどい悪寒に悩まされ、大布団をかぶっても体がガタガタ震えるほどでした。風邪の時のためにと思って準備(備蓄)しておいた葛根湯(煎じ薬)が自宅にあったので、それを飲みました。15分ほどしてから体が熱くなり始め、その後は大布団を脱ぐほど体がポカポカになり悪寒や頭痛も無くなり吐気は治まりました。しかし残念ながら下痢は翌日まで完全には止まりませんでした。葛根湯のおかけで結果的にひどい悪寒、腹痛や頭痛が消えたので気分的にはとても楽でした。私の場合、しかたなく身近にあった葛根湯を服用しましたが、回復も早かったので自分自身でも驚いています。なお調べてみると葛根湯は下痢症状がある時にも有効です(傷寒雑病論)。

最後に、ちょっとPRですが、漢方薬(煎じ薬)は2000年前の昔から老若男女を問わず用いられてきました。昨今は、医薬品を含め石油由来製品が身近に溢れていますが、天然の草根木皮を原料とする漢方薬だからこそ、小さな子供たちにもお勧めといえます。キッズプレイスの薬局である薬煎院薬局でも麻黄湯や葛根湯を扱っています。これからが風邪の本格的なシーズンですが、ブログをご覧の皆さんのお子さんが風邪に負けることなく、元気で冬を乗り越えら得ることを願っております。

2007年12月26日薬煎院薬局から

 「ばいきんまん」と言えはやなせたかし先生の「アンパンマン」の敵役ですね。子供たちも食事の前に「手に"ばいきんまん”が付いてるから良く石鹸で洗ってね!」というと、元気に「は?い」と返事が返ってきます…。

 さて、ブログをご覧のお父さんお母さん方への質問ですが、ばいきんまんの正体をご存知ですか?(笑)

 アニメの「アンパンマン」では、ばいきんまんは「ばいきん星」から来た天才科学者ということになっています。アンパンマンにやっつけられると、「ばいばいき?ん」と遙かかなたに消えて行ってしまいますが、このセリフが耳にこびり付いているお父さんお母さんも多いのではないかと思います(笑)。
しかし、ふと、お子さんからバイ菌って何?と聞かれると、上手く説明できていないことが多いかも知れませんね。そこで今日は、バイ菌についてのミニ知識を紹介しましょう。

 単に私たちが、「バイ菌」というと、人に悪さをする微生物を指すことが多いようです。しかしこれらは大まかに3つの全く違う生物がごっちゃになっています。それらは、?細菌(さいきん)、?真菌(しんきん)、?ウイルスの3つです。これらは目に見えないという点では同じですが、それぞれ別ものです。

 ?まず「細菌(さいきん)」ですが、悪玉で有名なのは、食中毒の大腸菌O157や虫歯菌のようなものです。一方、同じ細菌でも善玉のものは私たちの生活に欠くことができないものが多く、乳酸菌やビヒズス菌などが有名です。
 一般的に「細菌」は速いスピードで増殖するという特徴を持っています。もし悪玉菌が人間の体の中に入り免疫システムを突破すると、爆発的に増殖し大変危険な状態に陥ります。細菌が増えるのも困りますが、悪玉菌は様々な「毒素」を出すものが多く、早く細菌を除去する必要があります。
 特に、赤ちゃんの飲みかけのミルク(母乳)を保温器で温め続けたり、保管することが危ない理由は、栄養たっぷりのミルクの中では細菌が短時間に爆発的に増殖するためです。赤ちゃんは免疫系が未熟なため、感染症を引き起こすと重篤化する確率が高くなります(あかちゃんが38℃位の熱でも直ちに病院で処置を受ける必要があるのはこのためです)。

 ?次に真菌(しんきん)です。真菌の悪玉は良く知られた「カビ」です。黒カビ、青カビや水虫の原因の白癬菌などが有名です。真菌の善玉は「カビ」とは言わずに「麹(こうじ)」などと呼ばれます。味噌や酒もこの麹なくしては作れません。
 味噌や酒を作るのに時間がかかるように、真菌は細菌ほど短時間に増えることはありません。また胞子によって移動して増えるなどの特徴があります。
 真菌(カビ)は増殖スピードが遅いため、自分より増殖の速い「細菌」に栄養の良い場所を占領されてしまう可能性があります。そこで真菌は「細菌を溶かす物質」を体の外に出してこれを防いでいます、これが「抗生物質」です。例えば青カビは細菌を寄せ付けないように「ペニシリン」を体外に出しています。
 人間はこのカビが作る抗生物質を医療に応用しています。製薬会社は沢山のカビを世界中から集めて来て、その中から有効な抗生物質を見つけようとします。抗生物質はヒトの細胞を溶かさずに細菌の細胞のみを選択的に溶かします。
 少し専門的になりますが、?の細菌と?の真菌の違いは、前者が菌体内に「核」を持っていないのに対し、後者は「核」を持っています。名前が似ていても両者は構造的に異なる生物です。

 ?3つめはウイルスです。これはノロウイルスやインフルエンザウイルス、肝炎ウイルスなどが有名です。ウイルスは自分だけでは増殖できずに、必ず人や動物の細胞内に感染して増えます。ウイルスが厄介なのは、人や動物の細胞から外に出てくるとき、寄生していた細胞を破壊することです。ウイルスが沢山の細胞に感染するということはそれだけ体の細胞が破壊されるということになります。残念ながら抗生物質はウイルスには効きません(ウイルスへの対応については別の記事としてブログに書かせて頂きます)。

 ?細菌、?真菌、?ウイルスは人を含め動物や植物にも感染します。単独で感染することもあれば同時に感染することもあります(複合感染)。インフルエンザウイルスによる風邪の時にお医者さんが抗生物質を出されるのは、細菌による2次感染を防止するためです。特に小さなお子さんがインフルエンザウイルスに感染していて体力を消耗している時に2次感染の確率が高まりますので、お医者さんの指示に従って飲ませるようにしてください。ただし、抗生物質の乱用は「耐性菌」という厄介な細菌を作り出してしまう結果になるので、リスクを考えて使用する必要があります。最近では抗生物質が全く効かないスーパー結核菌(耐性菌)が出現して大きな問題になっています。

 細菌、真菌、ウイルスを完全に死滅させるには「オートクレーブ」という装置を使って高温高圧で滅菌します。オートクレーブとは、ご家庭にある圧力釜の医療向けの機械と思ってもらうと分かりやすいと思います。そこまでしなくても、一般家庭では煮沸したり、石鹸で洗うことによりある程度の確率で除去することができます。

 今回は細菌、真菌、ウイルスについての説明でした。これからまだまだ風邪の季節が続きますが、お子さんの病気への対処の一助となればと思います。次回はインフルエンザウイルスに有効な薬についてブログを書きたいと思います。

2007年12月6日薬煎院薬局から

 これから本格的な風邪の季節を迎えますね。今日は、お子さんが風邪をひいて発熱した時に特に気をつけるべきこと(最低限知っておいてほしいこと)について触れておこうと思います。

 子供は元気ですから、寒い外でも元気よく遊びますが、汗をいっぱいかいてそのままにしておくと、汗の気化熱で体温が奪われて体が冷えてしまいます。また冬はお風呂から上がった後で頭を良く拭いてあげないと風邪をひきやすくなりますから注意が必要です。特に空気が乾燥する冬は、外から帰ったら手洗いの他にうがい(嗽)なども重要ですが、いろいろと用心していても、もしお子さんが夜中に急に発熱したら、お父さんお母さん方はどうされるでしょうか。

 39℃位まででお子さんが比較的元気そうであれば、タオルで頭を冷やすなどして少し様子を見た方が良いのですが*、40℃を超えるようであれば小児科に駆け込む必要があります。近くに病院がなくて次の日の朝に行かれるのであれば(待てそうであれば)薬を飲ませることになりますが、そんな時、決してやってはいけないことがあります。

*乳児の場合は直ちに小児科(急患センター等)に行くようにしてください。乳児の38℃の熱はかなり重篤です。

 ごく当たり前のことですが、「大人用」の薬を与えてはいけません。「分量を減らせば大丈夫」と思って飲ませると、取り返しのつかない大変なリスクを冒すことになります。初めてのお子さんであれば、心配になって急患センターに行かれる方も多いのですが、2人目、3人目のお子さんとなると父さんお母さんも慣れてしまい「大人用の薬をあげて様子を見よう」と思われるかも知れませんが、そこに大きな落とし穴が潜んでいます。

 お医者さんや薬剤師なら知っていることですが、お子さんが風邪の時に(特にインフルエンザ等の場合)「アスピリン」のような(サリチル酸系の解熱剤が入った)薬を与えると、稀に「ライ症候群」という重篤な症状をひき起すことがあります。アスピリンに限らず、サリチル酸ナトリウム、サザピリン、サリチルアミド、エテンザミド等の薬剤も15才以下の子供には使ってはいけないことになっています。
 (余談)誤解のないように、「ライ症候群」は、ハンセン病の昔の呼び名の「ライ病」とは違います(こちらはライ菌による感染症です)。ライ症候群は、急性の脳浮腫や肝等への脂肪浸潤などを引き起こす、死亡率が高いものです。
 さらに付け加えて、「ピリン系アレルギー」などのように、ピリン系の解熱鎮痛剤に敏感な人がいますが、アスピリンはピリン系ではありません。ピリン系とはピラゾロン骨格(分子構造)を持った薬をいい、アスピリンはこの骨格を持っていません。

 特に子供がインフルエンザにかかると(インフルエンザの場合は、急に40℃近い熱が出ます)、適切な手当てを行わないと病態が急変して最悪の場合死に至ることもあります(およそ2日)。そうならないためにも子供が熱を出したらお医者さんに掛かるのが一番です。そしてもし、ご自宅でお薬を準備されるなら、せめて「小児用」と書かれた風邪薬か解熱剤を大人用とは別に準備するようにしてください。小児用には安全性が高い「アセトアミノフェン」という解熱剤が入っていて、この薬は日本小児科学会でも推奨されています(アセトアミノフェンは大人にも安全な薬です)。そして小児科に行ったら薬を飲ませたことを必ず先生に伝えてください(これは薬の二重投与を避けるために必要なことです)。

 最後に、解熱剤(げねつざい)は役に立つ薬の1つですが、取り扱い方がやや難しいところがあります。子供では比較的少ないのですが、解熱剤を飲むことにより、稀に喘息がひき起されることがあります。「アスピリン喘息」などと呼ばれています。「アスピリン喘息」はアスピリンだけで起こるものではなく、いろいろな解熱剤(NSAID)で起こり、喘息患者の10人に1人はこの「アスピリン喘息」といわれています。喘息がちでドラッグストアーで薬を買って飲んだら、余計にひどくなった経験のある方は疑ってみる必要があります。

2007年11月27日薬煎院薬局から

 私はキッズプレイスの薬局で薬剤師をしています。時々、小笹長丘保育園にお邪魔して、園児さんたちの様子を見ています。園では、保育士の先生方や園児さんから「漢方先生」と呼ばれています。自分ではこの呼ばれ方が気に入っています(笑)。さて、このブログをご覧のお父さんお母さん方の中にも、タバコを吸われている方がおられるのではないかと思います。今日は、専門的な立場からタバコのことについてちょっとだけ書き込みします。

 テレビの情報番組などでも時々取り上げられていると思いますが、小さなお子さんがいる家庭では、お父さん(お母さん)がタバコを吸うと、子供さんが副流煙を吸うことになり、当然ながら健康にはよくありません。妊娠しているお母さんがタバコを吸ったり、副流煙を吸うとお腹の赤ちゃんが流産したり、難産になる確率が高くなることもよく知られていることです。たとえ赤ちゃんが生まれたとしても、突然死症候群や奇形といった問題もつきまとう可能性がたかくなります。タバコの副流煙ですが、1000種類近くの化学物質が含まれ、分かっているだけでも40種類の発がん性物質が確認されています。

 タバコを吸われる方は、たばこの害が分かっていてもなかなか止められないようですね。私はタバコをすいませんが、それだけタバコが美味しく感じるのだろうと思います。また、タバコを吸われる方の多くはお酒も好きな方が多いようです。そんな愛煙家の人に質問すると、お酒を飲みながらタバコを吸うと、とてもタバコが美味しいと言う答えが返ってきます。しかしこの行為が命取りとなります。

 タバコを吸いながらお酒を飲むとガンになる確率が劇的に高まることが分かっています。アメリカの医学誌だったと思いますが、数年前にタバコを吸う人と吸わない人、またお酒好きの人とお酒を飲まない人のそれぞれの人たちについて学術的な調査が行われ、結果が報告されました。それによると、タバコに加えてお酒好きの人の組合せが最もガン(咽頭ガン、食道ガン、胃ガンなど)の発生率が高いことが分かりました。詳しいデータをはっきりとは覚えていないのですが、確率的に両方たしなむ人は、お酒も飲まず煙草も吸わない人い比べ20?50倍程度、また同じタバコを吸っていても、お酒を飲まない人に比べて、4?10倍程度、ガンになる確率が高くなっていたと思います。この調査データを端的な言葉で言い換えると、酒好きの愛煙家は、いずれほぼ間違いなくガンを発症するということを示しています。

 タバコとお酒でガンになる確率が飛躍的に高まるメカニズムは次のように考えられています。タバコに含まれる化学物質は発ガン物質を含めてアルコールに溶けやすい性質を持っています。タバコを吸うと口の中にタバコの化学物質が残りますが、お酒を飲むとにより、これらの成分が毎回きれいに洗浄されて胃へと流し込まれることになります。一方、アルコールは、喉や食道の壁を傷つけ、胃の粘膜を洗い流す性質を持っています。それゆえ、タバコを吸ってお酒を飲むと、喉や食道の壁が傷つけられると共に、胃壁は粘液を洗い流され、発ガン性物質に直接さらされることになります。

 会社などでストレスを感じている人は小さな胃潰瘍を持つ人が多いので、そのような人がタバコを吸いながらお酒を飲むのはとても危険といえるでしょう。
 上記では咽頭ガン、食道ガン、胃ガンにしか触れていませんが、肺がん等の危険性も別にあることを忘れてはいけません。ちなみに、1個の細胞がガン化して1センチ角の大きさに成長するまでには10?30年ほどかかりますが、1センチ角のガン組織がソフトボール大の大きさになるのはあっという間(3年くらい)です。この大きさになる頃には、ガン細胞が体中に転移して手遅れなことが多いです。タバコ好きで、お酒好きの人ほど定期的な健康診断が欠かせないと思いますが、なによりもタバコを止められることをお勧めします。

 愛煙家の人が、生きてお孫さんの顔を見るためには、ほんの少しの勇気が必要なのだろうと思います。

2007年11月17日薬煎院薬局から

キッズプレイスのお子さんのために、子育てに役立ちそうな情報を薬局からブログに流させて頂いてます。私は父親として子育て参加中の薬剤師です。子育てでお悩みがあれば知恵を絞って回答させて頂きます(もちろんお金はかかりません ^^;。

今回はお子さんがなかなか寝付かなかったり、夜更かしをして困る、また夜中に起きて夜泣きをして困る。といった場合の対処として、ポピュラーで効果がありそうな情報を書きたいと思いパソコンに向かっています。

この方法の対象年齢は、子供(2才?)に限らず大人まで応用可能です。大人でもなかなか寝付けなかったり、熟眠できない方は(人によって個人差があると思いますが)、科学的根拠に基づいた簡単な方法なので、試されるとよいと思います。

その方法とは、寝る3?4時間前ぐらいに牛乳を飲むということです。あまりにも簡単なのでウソ臭く聞こえるかも知れませんが、牛乳を飲むと熟眠できるということが実験的に証明されています。データ的には200ccの牛乳を飲むと、お酒を飲むより質の高い睡眠が得られることが分かっています(統計学的な有意差あり)。

ヒトの脳ミソは、ニューロトランスミッターと言われる神経伝達物質でコントロールされています。研究の結果からいくつかの種類が見つかっていますがその中に、セロトニンと呼ばれる物質があります。セロトニンが脳内で分泌されると人はとてもリラックスした気分になり眠気を感じます。緊張を鎮めて眠気を誘うセロトニンは、体の中でトリプトファンというアミノ酸から作られるのですが、牛乳にはこのアミノ酸が多く含まれています。

牛乳を飲んでも、体の中で直ぐにはセロトニンは作られませんから、寝る3?4時間前ぐらいに飲む必要があります。お風呂上りに牛乳をコップ1杯ぐらい飲むと徐々にセロトニンが分泌され、お布団の中に入る頃には徐々に眠たくなってくるでしょう。お風呂で失われた水分補給にも牛乳はもってこいですね。
どのくらいの量の牛乳を飲むと良いかは、個人差があるのでいろいろと試してみる必要があるかもしれません。また体の中でセロトニンが作られる時、ビタミンB6を必要とします。通常の食事をしていればビタミンB6は十分取られていると思いますが、牛乳だけではどうも苦手と言う方には、ビタミンB6を含むバナナやピーナツなどを一緒に食べるとよいかも知れません。
牛乳は、カルシウムが含まれているため、神経の興奮も鎮める働きが期待されます。余談ですが、不眠症の方のための漢方薬には、カルシウム源として牡蠣の貝殻や竜骨と言われる石膏成分が少量使われます。神経質な方にも牛乳のカルシウムはお勧めです。

どうですか、牛乳飲めそうですか?いろいろ考えると牛乳は朝飲むより夜飲んだ方が良いのかも知れませんね…。どちらにするかは読者の方にお任せします。

なお、最近はサプリメントによってトリプトファン等の必須アミノ酸やビタミンB6を手軽に求めることができますが、私自身は、基本的に病気以外でのサプリメントでの摂取は感心できません。食事や牛乳のように自然な形でバランスよく体に摂るのが一番だと思っています。少々専門的な話になりますが、純度の高いアミノ酸やビタミンを単体で体に補給し続けると、腸管膜における吸収機能自体が低下していく(ダウンレギュレーションのようなことが起きる)のではないかと危惧しています。特に小さいお子さんにへのサプリメントは気をつける必要があると思います。

2007年11月12日薬煎院薬局から

 子を持つ親としては、自分の子供の将来について心配ですよね。ブログを書いている私もその一人です。
 振り返ると私自身も「勉強しなさい」と両親から耳にタコができるほど言われました…。キッズプレイスに時々お邪魔しますが、小さなお子どもたちが机で文字や数字の勉強している姿を見るとほほえましくなります。
 今日は、小さなお子さんの子育てにすぐに役立つ内容ではないかも知れませんが、勉強のことについてブログを書いてみたいと思います。

 私自身の偏見に満ちた?考え方かも知れませんが、勉強そのものはテクニックの問題(勉強の仕方の問題)だと思っています。
 昔から「学問に王道なし」と言いますが、王道でなくても「コツ」さえつかめば「面白くて楽しい道」にすることはそれほど難しいことではないと思います。人間楽しければ、人から「やめなさい」と言われても突き進むようになります。私の知人に勉強好きのお子さん(中学生)がいて、両親が「勉強はほどほどにして遊びなさい」と言っても四六時中勉強して困っているそうです。「勉強をやめて早く寝なさい」というと寝床の中で懐中電灯をつけて本を読んでいるらしく、本人は勉強が楽しくて仕方がないらしいのです。

 大学時代のことですが、私は中学生3年生の子供の家庭教師をしていました。当時は(今もそうかも知れませんが)偏差値によって行ける高校が決まりました。先輩の紹介でしたが、偏差値44くらいのお子さんの家庭教師をすることになり、8ヶ月後に69の高校にすんなりと合格しました。両親にはものすごく感謝され、特別ボーナスとして中古の軽自動車をお礼にもったことがあります。大学生の私には嬉しいプレゼントでした。

 この子にどのようにして勉強を教えたか、皆さん興味がありますか? 実のところ最初から全ての教科について教えるようなことはしませんでした。当初は「理科」だけについて、その子が理解して「なるほど」と納得して、ニッコリと笑うまであらゆる事例を引っ張り出して徹底的に教えました。これによりその子の理科の成績は急上昇し、1?2ヶ月ほどで無理なく95?100点をとれるようになりました。
 この子の場合、理科を教えるというより「ていねいに解説した」といった方が正しいかもしれません。誰でもそうだと思いますが、理屈もわからず詰め込まれるのは苦痛です。しかし理屈がわかりればだんだんと楽しくなります。

 理屈を知ることの楽しさが分かれば、あとは各教科のポイントについてエッセンス(要点)を教えるだけで、興味を持って勉強をするようになります。つまりその子は、それまで苦しい道と感じていた勉強を楽しい道に変え、知ること(学問をすること)の楽しさを知ったわけです。小さなお子さんでも理屈は同じで、楽しいと思わせることは大切だと思います。

 話がかなり飛びますが、これからの世の中の変化を考えると、今後は勉強だけが大切とは言えないかも知れません。今の子供たちにとって「別の能力」が、を生きるために必要になるのではないかと私は思っています。なぜなら(私自身、)勉強は、沢山ある生き抜くための方法の選択肢の1つに過ぎないと思うからです。
 詳細は割愛しますが、別の能力とは、将来の危険を察知したり、自分の将来のストーリー(物語)を紡ぎだす力ではないかと思っています。

 これからの社会はあらゆる意味でますます厳しさを増します。人口爆発と言われるように、世界の人口はあと40年ほどで現在の2倍の100億人に達します。人口が増えれば食糧問題や環境問題が深刻化し、貧富の差による生活水準の差がますます拡大すると思われます、最悪の場合、大規模な戦争になるかも知れません。
 一方で、今の日本のような少子高齢化が続けば、子供たちが大人になった時、重い税金に苦しむことになると思われます。また、若い労働人口に欠ける日本は、労働力を海外から出稼ぎに来た(あるいは移民して来た)外人に頼らざるを得なくなり、治安の悪化も考えられます。

 勉強ができてよい大学を卒業したとしても、世の中を生きる力がなければ、結局は器用貧乏に陥る可能性があります。むしろ勉強が出来なくても雑草のように生き抜く力があれば大きな財を成すことも不可能ではありません。

 今の子供達が大人になる頃のことを考えると憂鬱ですが、勉強の他にどのような能力を身につけさせるべきか考えてあげることも親の責任かも知れませんね。

2007年10月27日薬煎院薬局から

 秋になり寒暖の差も大きくなり、また空気もやや乾燥してきましたね。キッズプレイスでも咳や鼻水のお子さんも見られます。最近ブログから遠ざかっていましたが、これから風邪の季節になる前に「嗽(うがい)」についてブログを書かせて頂きますね。「嗽」と漢字で書くと難しいですが、ゲロゲロゲロ…のうがいのことです。

 風邪の一番の予防法をお医者さんに聞くと、「帰宅後の手洗いと嗽です」と答えが返ってきます。手洗いは手についたバイ菌を洗い流すという上で大事なことは分かりますが、ではなぜ嗽が大切なのか、ご存知ですか…。

 その理由は、夜寝る前に一度嗽をすると分かります。嗽をして口から吐き出す時、よく観察してみてください。最初の嗽で口から出した水は、なんだか「ネットリ」していませんか。ところが2?3回目の嗽になるとネットリ感が無くなります。

 1回目の嗽で口から出した時に糸を引くように見えませんか?これは唾(つば)だと思われるかも知れませんが、口の中(口腔内)の、特に喉の奥にに溜まっていたバイ菌のかたまりです。喉のバイ菌は、喉の奥の壁面から剥がれ落ちないようにネットリした「粘液」を出して(接着剤代わりにして)へばり付いています。嗽をすることはこの喉の奥のバイ菌をきれいに洗い流すことです。
 ブログをご覧頂いている皆さんのご家庭で、寝る前に歯磨きを習慣にされているお子さんもおられると思いますが、歯磨きだけで安心していませんか?歯を磨いて口の中をすすいだだけでは喉の奥のバイ菌は洗い流せません。せっかく歯を磨くのであれば、ついでに嗽をすることをお勧めします。

 喉の奥のバイ菌のかたまりの中には風邪の原因となるウイルスも混じっています。ウイルスは喉の粘膜から体の中に感染していきますから、嗽でこれらのバイ菌やウイルスを洗い流すことが大切になるわけです。

 嗽の方法ですが、沢山の水で一回だけ嗽するよりも、少ない水で回数を多く嗽した方が洗浄効果が高くなります。また一回の嗽に延々20?30秒かけるよりも、3秒ぐらいの嗽を4回ぐらい繰り返した方が効果的です。そして、水よりもぬるま湯で、出来れば「塩」をほんの少し入れるとさらに効果的になります。
 バイ菌は粘液を出して喉の奥にへばりついていますが、塩はこのバイ菌の出す粘液を取り除く作用があります。これは例えば、ウナギを素手でつかもうとするとなかなかつかめませんが、手に塩をつけると簡単にウナギを捕まえることができることと同じです。ウナギは体の表面に粘液を出していますが、手に塩を付けることにより粘液を取り除くことができすぐに捕まえられます。嗽する水(お湯)に塩を入れると、へばり付こうとするバイ菌の粘液を取り除いて、よりきれいに洗い流せるという訳です。
 嗽は虫歯の予防にも効果があるので、風邪の季節だけでなく習慣にした方がよいかも知れませんね。

PR:育児のことで気になることがあれば、皆さんで考えていきたいと思います。コメント、もしくは匿名メールでも構いません、気軽にご相談ください。

2007年10月10日薬煎院薬局から

 保育所の先生が規則正しい生活の大切さを書き込まれておられましたので、そのことについて気づいたことを書きたいと思いました。冒頭からクイズですが、一日の規則正しいリズムを作る一番大切な要因は何か、ブログの読者の皆さんはご存知でしょうか。最近はテレビで教養番組が増えたのでご存知の方も多いかも知れませんが、答は朝の太陽の『光』です(正確には、大光量の非常に眩しい光)。

 ごく最近の研究によって、朝の太陽の光を浴びることにより、人間の体内のスイッチが夜から昼へと切り替わることが科学的に分かってきました。大人でも昼と夜の生活が入れ替わって、体のリズムが壊れた人を治療するために、病院でも蛍光灯だらけの眩しい部屋で30?60分間ほど、ただひたすら光を見つめる(浴びる)治療が行われます。これを「光療法」と言います。

(こんな言い方をすると怒られるかも知れませんが、お許しください)、朝、公園などで朝陽を浴びると気持ちいいと張り切っている元気なお年寄りの方がおられますが、これはともすると自慢話のように聞こえますが、実はそれだけとは言い切れません。

 秋から冬にかけて、どうしても気分が塞いで憂鬱になる方がおられます。これをウィンターブルー、またはSAD(季節変動制の感情障害)などということがあります。実はこのSADの治療にも先程の光療法が行われます。つまり、SADは朝陽を浴びことによって防ぐことができます(効果は劇的だとも言われます)。

 以上のことは、大人であっても子供であっても太陽の光を沢山浴びることで、体のリズムが作られ、精神的にも落ち着いてくると言えます。人間が動物であることを考えると、動物としては当り前の反応なのかも知れませんね…。

 早起きは3文の得と言いますが、大切なのは早起きではなく、朝陽を浴びることです。結論として、小さなお子さんの健康と健全な情緒の発展のためには、「朝陽」が重要なキーワードであると言えます。マンションにお住まいの方で、朝起きても部屋が薄暗く、お子さんも眠たそうにしている環境では、(ひょっとしたら)将来的に肉体的にも精神的な悪い影響がでるかも知れません。

 (大変余計なアドバイスかも知れませんが…)もし、朝がどうしても苦手なお母さんがおられましたら、朝だけでも短時間のアルバイトをしてみてはいかがでしょうか。自分にノルマを課すことによって、朝陽を浴びる機会を作れば、自分の人生とお子さんの生活が劇的に変わるかも知れません。福岡では東京より日の出が1時間も遅いので、朝陽が昇る頃に起床する必要があるバイトは結構あるのではないでしょうか。

2007年10月4日薬煎院薬局から

 最近は虫歯治療が格段に進歩して、ジィーとかキーという、ぞっとするようなドリルで削る方法に比べて、薬液で虫歯を溶かす方法やオゾンで虫歯菌を殺す方法など、痛くない治療法が色々と確立さています。しかし、最新の虫歯治療には保険がきかない方法も多く、嫌がるお子さんの虫歯の治療で困られているお母さんも多いと思います。

 お子さんがすでに虫歯であれば、残念ながら完全に治すのは難しいのですが、もしお子さんの年齢が0才児であれば、将来虫歯になることを予防できるかもしれません。離乳食の時期の赤ちゃんを持つお母さんがこのブログを読まれていたら、ぜひ役立ててほしいと思います。

 ご存知の方も多いかもしれませんが、実は、虫歯は人から人に伝染する伝染病です。赤ちゃんはお母さんのお腹から無菌状態で生まれてきますから、生後、誰かから虫歯菌が感染しない限り赤ちゃんは絶対に虫歯にはなりません。

 離乳食の時期になると、お子さんのためにお父さんお母さんが固い食べ物を口の中で噛み砕いて赤ちゃんにあげることが多いと思います。しかしこの時に、お父さん、お母さんに虫歯があれば赤ちゃんへと虫歯菌が伝染します。もちろん、おじいちゃん、おばあちゃんや兄弟からでも、虫歯のある人から口移しなどにより伝染します。

 赤ちゃんが2才ごろまでに、虫歯菌に感染しなければ、その後は一生虫歯になることはありません。たとえ後から虫歯菌が口の中に入ってきても、すでにお子さんの口の中には他の菌が住みついていて、新入りの虫歯菌を排除してしまいます。これを難しい言葉で細菌叢(さいきんそう)が出来ていると言います。

 親の愛情として、どうしても我が子のために、ご飯を噛み砕いたり、口移しをしたくなりますが、虫歯のことを考えるとちょっと考えてみた方がよいかもしれません。
 かたや(ご飯を噛み砕いたり、口移してもらえないことは)お子さんにとって、親の愛情を注いでもらえないことにもなりますが、その他のことでお子さんに愛情を注いであげたらよいのではないかと思います。

 虫歯は将来、リウマチなどの自己免疫疾患の引き金になったり、歯並びや背筋が悪くなる原因にもなりますから、できることなら虫歯にならないに越したことはないと思います。小さな赤ちゃんを持つお父さんお母さんはちょっと考えてみてみてはいかがでしょうか…。

2007年10月1日薬煎院薬局から

 今朝、薬局(薬煎院薬局)を開店すると、しばらくして電話がかかってきました。アトピーのお子さんを持つお母さんからで、「病院から出ている漢方薬の煎じ薬の処方箋を受け付けてくれますか?」とのご質問でした。

 私はてっきり、キッズプレイスを利用されているお母さんからの問い合わせだと思っていたのですが、話をしているうちに違うことが分かりました。その方は遠方より引っ越しされてきたばかりで、漢方薬の処方箋を受け付けてくれる薬局をお探しておられ、薬煎院薬局がキッズプレイスの薬局部門であることを知らずに、新聞広告を見て電話されてきたとのことでした。私は、そのお母さんに、どのような処方箋でも直ぐに受け付けることができるので、お急ぎでしたら処方箋をFAXして下さいとお話ししました。

漢方処方につかう生薬  漢方煎じ薬

 電話のお母さんの話では、ご自宅に漢方薬の煎じ機をお持ちとのことでしたが、薬煎院薬局ではお、専用の装置で漢方薬を煎じ、アルミパックに無菌状態でパック詰めするサービスを行っていることをお話しすると、喜ばれておられました。

 5才のお子さんでアトピーと聞くと、可哀そうで少し胸が苦しくなります。どのような処方の漢方薬か(このブログを書いてる時点では)分かりませんが、お医者さんが子ども用に飲みやすい処方を選ばれているとよいと思います。また、漢方薬がその子さんの体質に合っていて、少しずつ改善に向かえば良と思います。
 アトピーの治療はどうしても長期戦でになりますから、母さんが、副作用が少ない漢方薬を選ばれたことは、お子さんにとっても大変賢明な選択だったと思います。

アトピーが良くなって、将来お子さんと一緒にキッズプレイスに遊びに来られたらすごく嬉しいですね。

薬煎院薬局から

キッズプレイスでは生後5ヶ月の赤ちゃんをお預かりしています。この月齢になると、赤ちゃんはよく指しゃぶりをします。替えたばかりの「よだれかけ」も直ぐにぐっちょりです。また、このころから知能の急速な発達が見られ、同時に何でもかんでも口に運んでしまします。

時々お母さんが、赤ちゃんの指しゃぶりを見て「きたない」と心配されることがあります。しかし、これはあまり気にする必要はありません。むしろ、赤ちゃんにとって指しゃぶりは、アレルギーに負けない強い体を作るために、とても大切なことと言えるかも知れません。

赤ちゃんに限らず3?4才ころの子供たちが汚そうなものを口に入れていても、特に不潔であったり危ないものでなければ、保護者の方はあまり神経質に止めないであげてほしいと思います。もしこれを無理にやめさせると、将来的に子供たちの体がアレルギー体質となる可能性が高まる危険性があります。

私たちの体の中には、免疫を担う「Tリンパ球」という細胞があります。このTリンパ球には、体の外から入って来たバイ菌やウイルスを攻撃する「T1」と、アレルギーに関係する「T2」があります。この2つのTリンパ球の割合が、正常に保たれているとよいのですが、T1に比べてT2の割合が多くなるとアレルギー体質に傾きます。

T1とT2は、どちらかが増えるとどちらかが減る関係にあり、互いの存在割合は生後3?4才ころまでに決定されてしまい、一度決定されると、成長してもその割合は変わらないと言われています。このことは、アレルギーが治りにくい原因の1つと考えられています。

3?5才ころまでに清潔すぎる環境で育てられた子供の体は、自然とT1の出番が少なくなってT2が増え過ぎ、潜在的なアレルギー体質になります。このような体質の子供が、アレルギー物質(とアレルギーを助長する物質)に出会うとアレルギーを発症することになります。

冒頭に紹介した赤ちゃんの指しゃぶりですが、赤ちゃんは病気を発症しない程度の、ごく微量のバイ菌やウィルスを指しゃぶりをすることによって体に取り入れ、地道にT1の割合を増やし、アレルギーにならないようにT1とT2の割合を正常に保とうとしているとも考えられます。

人間の住む環境は、この半世紀で驚くほど衛生的になりましたが、人間の体の免疫システムは、私たちが野山で暮らしていた石器時代のころのままで、ほとんど変化していません。生物の進化には数千年から数万年単位の時間がかかるといわれていますが、(端的にいえば)現代人の体は未だ3000年以上前の非衛生的な環境に対応したままであり、近年50年間で劇的に整備された衛生的な環境に順応する進化を遂げきってはいないといえます。
あまりにも生活環境がきれいになり過ぎたために、人はアレルギーと言う、思いもよらぬ副作用に悩むことになったのかも知れません(この辺の詳しい話をお知りになりたい方は、東京医科歯科大学名誉教授の藤田紘一郎(ふじたこういちろう)先生の著書が刺激的でもあり、また分かりやすいかも知れません)。

最後に、誤解の無いように、
ここでは、子供たちが汚いものを触ったり、口に入れようとすることを止めないよう勧めているいるのではありません。子供たちが危険なものや本当に汚いものを触ったり口に入れようとした時は、?周囲の大人がちゃんと注意してあげるべきです。しかし「ちょっと汚いかな?」と思うレベルでは、特に口出しせずに、そっと見守ってあげる気持ちが大切だと思うのです。それは子供たちの心の成長のためでもあり、バイ菌やウイルスに負けない、アレルギーにならない丈夫な体を作るためにも必要だと思うのです。

そして、もし、お子様がアレルギーになったり、アレルギー体質(アトピーや喘息等)であれば、T1の割合を増やすように、生活や食事をコントロールする必要があります。しかし、だからと言ってバイ菌やウイルスを口にするのは大間違いです。専門のお医者様や薬剤師にご相談下さい。