読者からのご質問にお答えします

2009年7月17日

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キッズプレイスには保育園の他に薬局があります。保育園の行事の隙間を埋めるように、時折、子育てに役立つと思われるトピックスを薬局のスタッフが紹介しています。
しかし、その内容はスタッフの独断と偏見に基づいたものですので、すべての方に役立っているかどうかは分りません…。さらに、ブログの記事は多角的に分析するなど周到に準備して書いているのではなく、どちらかと言えば少々軽い気持ちで書かせて頂いていますので、内容について100%保障することができません。このことを頭の隅に入れて頂いて、以前ブログに書いた記事を読まれた読者の方からから頂いた質問にお答えいたします。

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質問は、このブログでも2回ほど取り上げています「インフルエンザに麻黄湯」についてで、「風邪のひき始めに良いと言われている葛根湯と麻黄湯ではどちらがインフルエンザに良いですか?」というものです。数日ほど前に直接メールで質問を頂きました。この質問はとても良い質問でしたので、質問者に了解を得てブログでお答えするようにしました。

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早速、回答を書かせて頂きたいところですが、前置きを2つだけ書かせて頂きます。

1.ブログでキッズプレイスでは、いたずら防止の目的で、ブログへの質問を直接行えないようにしております。このため、直接電子メールで質問を頂きました。質問を頂くということは、読んで頂いている読者の方がおられるということで、書き手としてはとても嬉しいことです。T様ありがとうございました。

2.漢方についての質問は、本来、子育てと関係ないように思われがちですが、漢方薬は重篤な副作用が少なく、お子さんの病気などにも良いと信じて書かせて頂いています。しかしながら病気に関して、少なくとも私はお子さんの病気を直接見ることができませんので、記事を鵜呑みにすることなく主治医の先生の指導に従ってください。

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お待たせしました、麻黄湯と葛根湯についてお話します。
この2つの処方には、生薬の「麻黄(マオウ)」が含まれていて、インフルエンザのひき始めに服用すると、新薬の抗インフルエンザ薬と同じぐらい効果があることが学会で報告されています。

ではどちらが良いのでしょうか。
麻黄湯と葛根湯は、良く似た処方ですが症状や体質によって使い道が若干違います。
これらの処方は、今から2000年ぐらい前に書かれた漢方の古典「傷寒論(しょうかんろん)」という書籍に書かれています。解説は割愛しますが、詳細を知りたい方は傷寒論について書かれた解説書を読まれることをお勧めします(傷寒論自体は漢文で書かれています)。傷寒論には私の偏見が入らない漢方の奥義が書かれています(ここでは「証」などの考え方を使わずに解説します)。

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“一般的に、”漢方薬は、含まれる生薬の数が少ないほど作用の切れが強くなります(強く作用します)。普通に考えると生薬の数が多いほど、いろいろな成分が作用して病気に効きそうな気がしますが、実際は逆と言えます。漢方薬は生薬の数(これを薬味と言います)が少ないほど、含まれている生薬の効果がストレートに出やすくなり、薬味が多いほど互いの効果が緩和されてマイルドになります。

麻黄湯は、麻黄(マオウ、4)、桂皮(ケイヒ、4)、杏仁(キョウニン、3)、甘草(カンゾウ、1)の4つですが、
葛根湯は葛根(カッコン、8)、麻黄(マオウ、4)、生姜(ショウキョウ、1)、大棗(タイソウ、4)、桂皮(ケイヒ、3)、芍薬(シャクヤク、3)、甘草(カンゾウ、2)の7つです。括弧の数字は生薬量を示しています。

このことから麻黄湯は葛根湯より作用が強く現れやすいことがお分かりだと思います。

麻黄湯ですが、体力があって胃腸の強い人に適しています。このためお年寄りや、体力の消耗が激しい場合などには慎重を要します(後述の汗をたくさん書いている状態も体力の消耗が激しい状態に相当します)。
さらに麻黄には心臓の働きを高める成分が含まれているため、心臓疾患や高血圧の治療を受けている方が服用される場合は医師または薬剤師に相談すべきです。一方、葛根湯は麻黄湯より体力がなく、どちらかといえば胃腸の弱い方に向いています。

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葛根湯は胸から上の炎症を抑える効果に優れ、肩こりや、風邪(インフルエンザ)による筋肉や関節の痛みがある場合、喉や鼻の痛みなどがある場合に効果的です。また下痢などの症状があるときも葛根湯が適しています。
葛根湯には生姜(ショウキョウ)という生姜(しょうが)を乾燥させたものが入っていますので、これが大棗(タイソウ)などの生薬と奏功して体を温めてくれるので、悪寒がするような時にも効果的です。

葛根湯も麻黄湯も汗を出すようにして病気を治しますが、特に麻黄湯はこの作用(発汗作用)が強く出ますので、既に汗がたくさん出ている人に飲ませると体力を消耗することになり良くありません。

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葛根湯と麻黄湯に含まれる「麻黄」には、A型インフルエンザウイルスに対する増殖抑制効果が実験的に認められており(学術文献;Mantani, et al: Antivir Res: 44(3); 193-200, 1999)、この力をインフルエンザに生かすためには、薬味の少ない麻黄湯の方が向いていると考えるのは道理だと言えます。しかし、胃腸が弱かったり、下痢気味であったり、体力がない場合や筋肉のこわばりなどの症状がある場合は葛根湯がおススメです。

一方、さらに体力のない高齢者などには、葛根湯より「麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)」が良い場合があります。
麻黄附子細辛湯は、麻黄(マオウ、4)、細辛(サイシン、3)、附子(ブシ、1)が含まれています。

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これは麻黄湯よりさらに薬味が少ないので、麻黄の作用が現れやすくなっています。
麻黄湯より薬味が少ないので、さらに体力がある方むけの処方のように思われがちですが、「附子」が含まれているため、体力のない方むけの処方となっています。この附子とは、猛毒を持つトリカブトの根を乾燥させたものですが、煎じることによってその毒性は1/1000~1/2000まで減じられ、虚弱な方にエネルギー(気)を与え体を温める作用をもたらします。漢方薬の中で、この附子が入っているものは、虚弱体質の方向けの処方が多いです。
麻黄附子細辛湯の麻黄と附子に含まれる成分は、血圧を上昇させるように働くため、高血圧気味の方には使えません。

長くなりましたが私が知っていることで、頭の中に思いつくところを書きました。参考になれば幸いです。
次回は、以前予告しておりました、水分摂取と水毒の2回目について近日中に書かせて頂きます。